



以上の目的と課題を達成することにより、本研究は日本語専攻教育におけるICC能力の記述と教育内容に関する基礎研究として、理論的価値及び実践的価値に富んでいると考えられる。
(1)理論的価値。
まず、初めて日本語専攻教育に焦点を合わせ、ICC能力の記述を中心として基礎研究を試みる点である。ICC能力についての研究は、いろいろな言語を媒介語とするコミュニケーションに焦点を置いて行われている。しかしながら、媒介語により、コミュニケーションに求められる要素は異なる。そのため、ICC能力の研究が立ち遅れている中国という文脈を特定し、日本語を使うコミュニケーションに必要となる能力を研究することは、ICC能力の研究を拡大させるとともに、日本語専攻教育におけるICC能力の育成研究を促進することに貢献できると考える。
次に、ICC能力の育成のために、中国人の視点から、実証研究を通じて日本語専攻教育の教育内容を検討する点である。実際の社会的ニーズと教育現場の間の差異から日本語教育におけるICC能力の育成の手がかりを探索した結果、中国人日本語学習者
に向けの教育内容のモデルを提出することが可能となった。学習者のICC能力の育成の重要性が増大する中で、教育内容を明らかにすることは、今後、同能力の育成を目指す教育実践に基礎的資料を与えると思われる。
(2)実践的価値。
現段階での日本語専攻教育におけるICC能力の育成の状況を全体的に把握することができる。本研究は、日本語専攻教育を貫いている基本理念·教師のビリーフ·教科書における扱い方の3つの側面から、ICC能力育成の状況を把握した初めての研究である。そこから、育成の特徴と不足点を踏まえ、これからのICC能力の育成に関する研究の方向性について展望を与えている。