Chapter 02
海 かい 外 がい に 思 おも う

人在海外的所想

●　30 年前 ねんまえ だ。 中 ちゅう 国 ごく 国 こっ 家 か 公 こう 務 む 員 いん として 中 ちゅう 国 ごく 社 しゃ 会 かい 科 か 学 がく 院 いん 哲 てつ 学 がく 研 けん 究 きゅう 所 じょ に 助 じょ 手 しゅ 研 けん 究 きゅう 員 いん の 籍 せき を 残 のこ したまま、 留 りゅう 学 がく 予 よ 定 てい は1 年 ねん で 谷 たに 崎 ざき 潤 じゅん 一 いち 郎 ろう 著 ちょ 『 細 ささめ 雪 ゆき 』 中 ちゅう 国 ごく 語 ご 訳 やく に 挑 ちょう 戦 せん しようとし、その 後 あと は アメリカ への 進学 しんがく も 予 よ 定 てい していた。しかしそのすべては 翌年 よくねん の1989 年 ねん で 変 かわ わった。 ベルリン から 妻 つま を 呼 よ び 寄 よ せ 、 日 に 本 ほん に 留 と まる ことにした 。

●　30年前，我作为中国国家公务员，保留了一段时期的助理研究员的身份，原本打算到日本留学一年，翻译谷崎润一郎的《细雪》，然后再到美国留学。可是，所有这一切都在1989年发生了变化，那一年我把妻子从柏林叫到了日本，并留在了日本。

● 日 に 本 ほん には 地 じ 続 つづ きなんか なく 海 うみ に 囲 かこ まれた 島国 しまぐに だ。だから、 国 こっ 境 きょう を 目 め にすることもでき なければ 、 外国 がいこく のように 国 こっ 境 きょう を 超 こ える コース を 旅 たび することもできない。 川 かわ などを 隔 へだ て ている 国 こっ 境 きょう や 野 の 原 はら のようなところも 少 すく なくない。そういう 意味 いみ で 普 ふ 通 つう の 国 くに ではない 日 に 本 ほん なの かもしれない 。

●　与其说日本是陆地的接续，还不如说是被大海环绕的岛国。国境无法从陆地划分，不像其他国家可以按照国境策划跨境旅游路线。日本有很多河流与原野，从这个意义上说日本也许不是个普通的国家。

● 文 ぶん 化 か 的 てき な 意味 いみ で 日 に 本 ほん は中国 にとって 間 ま 違 ちが いなく 他 た 者 しゃ だ。しかし 他 た 者 しゃ とは 何 なん なのか、その 存在 そんざい を 直 ちょっ 観 かん するということは いかなる 状 じょう 況 きょう なのか、と 問 と い を 進 すす めなくてはならない。 無 む 論 ろん 、この 問 と いに 十 じゅう 全 ぜん な 回答 かいとう を 与 あた える ために 、 おそらく 長 なが い 長 なが い 年月 ねんげつ が 必要 ひつよう であろう。 現 げん 段 だん 階 かい では、 他 た 者 しゃ をその 対 たい 極 きょく からみる べきだ 。

●　从文化的意义上说，日本对中国而言，无疑是他者。但他者究竟是什么呢？对其存在的直视，无论处于什么状态下，我们都是要进行下去的。当然，为了获得十全十美的答复，估计得要漫长的岁月。就目前的阶段来说，观看他者应该从对立面出发。

● 連 れん 日 じつ の 祇 ぎ 園 おん 祭 まつり で 大 おお 勢 ぜい の 人 ひと 々 びと は 各 かく 地 ち から 集 あつ まり、 にぎやか だ。 異 い 文 ぶん 化 か に 惹 ひ かれて 京 きょう 都 と 移 い 住 じゅう までしたアメリカの 友人 ゆうじん がいるからその 神 しん 事 じ や 祭 まつ りの 魅 み 力 りょく がわかる。しかし 街 まち 中 なか に おびただしく 多 おお くの 制 せい 服 ふく 姿 すがた の 警 けい 察 さつ 官 かん と 警 けい 備 び 員 いん もいて 威 い 圧 あつ 感 かん で さえ 感 かん じる スケール だ。 制 せい 服 ふく ではなく 祇 ぎ 園 おん 祭 まつり の ハッピ を 着 き ることができないのか。

●　祗园祭持续了好几天，人如潮涌，很热闹。我有一个美国朋友因被异文化吸引而移居到了京都，可见日本文化中敬神的礼仪以及祭祀的魅力。不过，当天的街头有很多警察和警备人员，身穿威压感十足的制服，令人不悦。他们能不能不穿制服，披上一件祗园祭专用的号衣呢？

● 中 ちゅう 国 ごく の 若 わか い 読 どく 者 しゃ は 日 に 本 ほん の サブカルチャー というものを 中 ちゅう 国 ごく 式 しき 体 たい 験 けん として 捉 とら えて いるが、 理 り 解 かい している かというとほとんど の 読 どく 者 しゃ は 理 り 解 かい していない。誰かにこれはいいもので 読 よ めば 得 とく するからって 言 い われて 読 よ みはじめる 。それで 日 に 本 ほん から 離 はな れて ニコニコ して 満 まん 足 ぞく してしまう。 日 に 本 ほん 文 ぶん 化 か を 消 しょう 費 ひ したその 瞬 しゅん 間 かん でもある。

●　国内年轻的读者喜欢把日本的亚文化当作中式体验，他们是否真正理解了亚文化呢？似乎又不太像，他们总是被别人提醒“读了这个有好处”，于是就开始读起来。离开日本之后，他们微笑着并感到满足。这一个瞬间恰恰是对日本文化的消费。

● 中 ちゅう 国 ごく における 日 に 本 ほん 文 ぶん 化 か の 拡散 かくさん を 見 み る と 、 若者 わかもの たちの 発信 はっしん は 顕著 けんちょ な 特 とく 徴 ちょう として 政 せい 治 じ 情 じょう 勢 せい に 向 む かわずに、 むしろ 好 こう 奇 き 心 しん 溢 あふ れる 対 たい 象 しょう 、 例 たと えば 祭 まつ りや 職 しょく 人 にん の 技 わざ などが ソーシャルメディア を 通 つう じて 社会 しゃかい に 広 ひろ め られている。それらは 知 ち 的 てき 欲 よく 望 ぼう を 満 み たす ための 手 しゅ 段 だん であろう。 けっして 政 せい 治 じ 目 もく 的 てき を 達 たっ 成 せい するためではない。

●　看到日本文化在中国扩散，总觉得其在年轻人中的传播最明显，这和政治倾向没什么关系，反倒是跟年轻人的好奇心以及他们感到好奇的对象有直接的关系。比如，祭祀啦，工匠啦，这些都是通过社交媒体得以在社会上扩散的。这是满足了解欲望的手段，而不是为了达到什么政治目的。

●　「 日 に 本 ほん 文 ぶん 化 か の 型 かた 」を 研 けん 究 きゅう した 名作 めいさく として ルース·ベネディクト 氏 し の『 菊 きく と 刀 かたな 』はよく知られているが、しかしその 視 し 点 てん は ステレオタイプ で あまり いい 分 ぶん 析 せき ではない 気 き がする。もっともダメなのは 全 ぜん 編 ぺん にわたって 西 せい 洋 よう 文 ぶん 明 めい が 好 この む 勧 かん 善 ぜん 懲 ちょう 悪 あく に すり 替 か わった ということもやはり 違 い 和 わ 感 かん があり 今 いま の 時 じ 代 だい には 通 つう 用 よう しない。

●　鲁思·本尼迪克特的名作《菊与刀》是研究日本文化类型的，不过，她的视角过于单调，只是一个传声筒，并没做出多么精彩的分析。最糟糕的是全篇都以劝善惩恶的西方文明为由头，与当今的时代不匹配，违和感很强。

● 日 に 本 ほん という 国 くに は 元 げん 気 き で 生 い きている。 中 ちゅう 国 ごく も 生 い きているものだ。お 互 たが いに 生 い きているものとして それなり の 生 い きている 環 かん 境 きょう に 対 たい して 適 てき 応 おう 性 せい を 持 も た なければならない 。それは 他 ほか でもなく「 慣 な れ」という 一言 ひとこと に 尽 つ く。 双方 そうほう は 抵抗 ていこう なく 相 あい 手 て の 文 ぶん 化 か を 深 ふか く 理 り 解 かい すれ ば いい。 今 いま までの 簡 かん 単 たん な「 学 まな びあおう」 なんて やめた ほうがいい 。

●　日本这个国家是活生生的，中国也是活生生的，作为相互都是活生生的国家，必然对所处的环境具有适应性。毋庸赘述，这就是“习惯”二字。双方无抵抗、深入地了解对方的文化才对，而不是迄今为止简单的“互相学习”。

● 日 に 本 ほん 文 ぶん 化 か の 魅 み 力 りょく を 理 り 解 かい したいという 気持 きも ちがある 一方 いっぽう で、どこまで 分析 ぶんせき しても 解 と け ない 謎 なぞ が 残 のこ っ てほしい という 複雑 ふくざつ な 思 おも いがある。 中 ちゅう 国 ごく 人 じん 読 どく 者 しゃ の 中 なか で 時 じ 間 かん と 共 とも に 読 よ みも 深 ふか まってゆくが、その 読物 よみもの が 優 すぐ れた 作品 さくひん であれば 最 さい 終 しゅう の 謎 なぞ は ますます 妖 あや しい 光 ひかり を 放 はな つことになる。これこそ 日 に 本 ほん 文 ぶん 化 か の 魅 み 力 りょく なのかもしれない。

●　我有时很想理解日本文化的魅力，同时又有一种希望其文化之谜永远不要被解开的复杂心情。即使国内读者对作品的理解会随时间加深，但如果是精彩的作品，其最终的谜团一定会放出妖艳的光芒。这也许就是日本文化的魅力。

● 中 ちゅう 国 ごく 人 じん 読 どく 者 しゃ の 立 たち 場 ば から 日 に 本 ほん 文 ぶん 化 か の 可 か 能 のう 性 せい を 考 かんが えるときの 判 はん 断 だん 基 き 準 じゅん は、 二 ふた 通 とお りある。ひとつは「どうでもいいこと」、もうひとつは「 人 にん 間 げん の 共 きょう 同 どう 体 たい の 思 し 考 こう にかかわること」で、それらを 見 み 極 きわ め なければならない。どの 部 ぶ 分 ぶん をお 伝 つた えするのか 無 む 論 ろん 、 単 たん なる ビジネスベース や 利 り 便 べん 性 せい ベースだけ で 論 ろん じるべ きではない。

●　从中国读者的立场出发，考虑日本文化的可能性时，有两个判断基准。一个是“无所谓基准如何”，另一个是“与人类共同体的思考相关联”，这两个需要分清。至于究竟应该传播哪一个，不应该单纯地从商业水准或者看其是否便利而进行讨论。

● 日 に 本 ほん 文 ぶん 化 か は 中 ちゅう 国 ごく の 若 わか 者 もの たちにとって、 一 いち 部 ぶ 分 ぶん ではなく 全 ぜん 体 たい 的 てき に、また 他 た 者 しゃ との 関 かん 係 けい につよく かかわる 以 い 上 じょう 、その 特 とく 異 い 性 せい が 顕 けん 著 ちょ に あらわれる のは、 彼 かれ らの 世 せ 界 かい への 認 にん 識 しき としての 形 けい 態 たい そのものだ。 知 し ることを 通 つう じて 外部 がいぶ への 予知 よち に 敏 びん 感 かん なため、その 知 し りたいという 意 い 欲 よく は 未 み 来 らい の 先 さき 取 ど り とも 言 い えるかもしれない。

●　对中国的年轻人来说，日本文化不是从部分上，而是从整体上与他者有关联的，对这一特征表现得非常清晰的是他们对世界认识的方式。通过“了解”，对外部的预知会变得敏感，因此或许也可以说“想要了解”的欲望是预见未来的途径。

● 日 に 本 ほん 各 かく 地 ち への 旅 たび で、 これまで のぼくの 経験 けいけん やその 軌 き 跡 せき が どんどん 付 つ け 加 くわ え られ、どんどん 積 つ み 重 かさ なっていく と、もうひとりのぼくという 紀 き 行 こう 文 ぶん 学 がく 意 い 味 み でのイメージが 鮮 あざ やか に 立 た ち 上 あ がって くる。 実 じつ に 妙 みょう な 気 き 分 ぶん だ。そして 今 いま でも 忘 わす れ がたく 日 に 本 ほん 語 ご も 中 ちゅう 国 ごく 語 ご も 書 か き 続 つづ けて いる。

●　我到日本各地旅行，不断增加的是自己的经验以及所去所往的轨迹，这种积累让纪行文学意义上“另一个我”的形象越来越鲜明，感觉挺奇妙的。所以，一直到今天，我从来都不忘坚持用汉语和日语把它们写下来。