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2.3 中国語の “把”構文

2.3.1 先行研究

“把”構文の有している高度な 「他動性」を論述したいくつかの代表的な研究では,王惠(1997)は構文の他動性が主語,目的語及び述語動詞に備わっている 「他動性」の特徴に現われていると述べている。述語動詞については,その前後にほかの成分を附加する必要があり,動詞構造VPを形成しなければならず,少なくとも “単純Ⅴ +了/着/过”という構造が保たれなければならないといっている。

安井(1999)は述部の動詞構造がいずれも目的語が動作の影響を受けた後の結果状態を表しており,このような結果状態の明示によって,動詞の表す動作·行為に必ず終結するという限界点を持つとしている。

一方,张伯江(2000)は,“A把BVC” という構文の全体的意味は,即ち,< Aを起因にし,対象としてのBに対して,Vという方法によってそのBに完全な変化Cを実現させる > という行為を表すものであると述べている。さらに,张伯江(2001)では“把”構文は受動者の被影響性を表し,このような構文的意味の形式的な現われとして,“把”構文を形成する動詞は単純動詞であってはならないとしている。

前掲の先行研究はいずれも “把”構文を形成する文成分の意味的特性を分析することによって,“把”構文は他動性の高い構文であることを明らかにしているが,このような高度な他動性が求められるのは,“把”構文に現われているどのような事態認識によって動機づけられるものなのかは明らかにされていない。

2.3.2 “把”構文のプロトタイプ

“把”構文の高度な他動性は対象物が完全に影響される (“完全受影响”)という高い 「受影性」(affected)によって動機付けられるものと考えられる。Hopper and Thompson(1980)などに述べられているように,典型的な他動詞構文は,事態の終結後,対象物が必ず明らかな状態変化を受けているという意味が含まれており,対象物の完全な 「受影性」は高い他動性を実現する基本的な要因であると思われる。

(16)小王把玻璃打碎了。

(17)小王把桌子搬走了。

(16)では 「窓ガラス」が割れており,(17)では 「机」が移動されているというように,対象物が受ける何らかの 「変化」が焦点化されている。したがって,本論では “把”構文のプロトタイプを次のように規定しておきたい。

(18)動作主と対象の二者が関与し,動作主からの力によって生じる対象の状態的,位置的変化が焦点化されることを表す構文である。

そして,この種の事象変化を次のような認知モデルによって示す。

図 3 “把”構文の認知モデル

矢印と破線の加わるサークルを太線にすることによって,対象の受影性が焦点化されることを示す。

2.3.3 統語的構造

前掲例が示したように,事象構造における一連の因果連鎖の中で,対象に生じている何らかの変化が 「認知的際立ち」となり,プロファイルされている。このような 「認知的際立ち」に対して,言語化レベルではいわゆる 「動詞+結果」型の動詞構造を述語として対応するのが適切であるという事実は,これまで数多くの先行研究に繰り返し指摘されているところである(例えば,本研究との関連では王惠(1997),安井(1999)など)。

“把”構文の成立に 「動詞+結果補語」構造のほかに,「動詞+ アスペクト助字」という構造も必要条件の一つとして挙げられることから,本論では张伯江(2001)に倣って,「VC」 で一括して表すことにする。したがって,“把”構文の原型的形式は次のように規定することができる。

(19)“把”構文の原型的統語構造:“X把YVC”

2.3.4 意味的構造

(16)(17)に表されている事象変化は因果連鎖のモデルで次のように示すことができる。

(20)

(21)

大枠で囲まれているのは事象構造におけるプロファイルされる部分である。

このように,“X把YVC”構文の表す典型的事態はつまり,Yに生じているCという変化はXのVという動作·行為によって引き起こされるものである。したがって,“把”構文のプロトタイプ的意味構造は次のように規定することができる。

(22)“把”構文の原型的意味構造:

[AGENT: ACT] + [ PATIENT ACCOMPLISHMENT

太字は事象構造におけるプロファイルされる部分を示す。

2.3.5 “把”構文の拡張ネットワーク

2.3.5.1 “把”構文の意味的類型

本節では次に示されるような例を取り上げ,Y-Cという事象変化はどのように引き起こされるのか,つまりX-Vという連鎖上の一部とどのように係わっているのかを分析することによって,“把”構文の意味的類型を規定する。

(23)a.小王把衣裳晾干了。(马希文 1987:428)

b.小王把头发剪了。(薛凤生 1994:40)

c.小王把地址写反了。(张黎 2005:79)

d.小王把鞋洗湿了。(马希文 1987:429)

e.去年老王又把老伴儿死了。(朱德熙 1982:187)

(23a)小王把衣裳晾干了。

“衣裳-干”という事象変化は “小王-晾”という能動的な行為によって直接的に引き起こされ,王さんはこのような事象変化の引き起こし手であり,「動作主」である。両者の因果関係は次のように示すことができる。

実線の矢印は両者を結びつける直接的な因果関係を示す。この因果連鎖は主語の [+意図性][+動作性]によって特徴づけられる。

(23b)小王把头发剪了。

日本語の 「介在性の他動詞文」と同様,実際「髪を切る」という行為は主語名詞句の 「王さん」ではなく,ほかの誰かにやってもらったという解釈も可能である構文である。ただⅤという行為を行ったのは誰であろうが,「髪が短くなった」という結果状態には変わりは無い。

(23c)小王把地址写反了。

ここでは 「王さん」が例えば,郵便物の住所を書いたが,宛先と差し出し人を反対に書き間違えてしまったという意図しない結果を生じさせたということを表している。このような結果状態の発生は 「王さん」にとって無論望んでいないことではあるが,不本意の結果を招いたのはやはり 「王さん」自身であり,過失の責任は実際Ⅴという行為を行った主語名詞句にあると考えられる。

(23d)小王把鞋洗湿了。

「王さん」の “洗”という行為は意図的ではあるものの,その行為の向けられる対象はほかの洗濯物であって,“鞋”ではない。“鞋湿了”という結果状態の発生は 「王さん」の洗濯行為に起因するものであり,「王さん」にとって意図しないものである。服を洗った結果,必ずしも 「靴が濡れた」という変化がもたらされるわけではなく,因果連鎖上の二つのイベントを結びつける必然性は見出されない。

(23e)去年老王又把老伴儿死了。

「連れ合いがなくなった」という事態は 「王さん」の何らかの行為によって引き起こされたことでもないし,また 「王さん」が意図している結果でもない。さらに 「王さん」が誰かに指示を出して,このような事態を引き起こさせたことでもなく,「王さん」の何かの行為によって,不本意ながらこの事態の発生をもたらしたことでもない。「王さん」はこのような事態変化の起因者であるどころか,むしろこの変化をうけざるをえない,不利益を被った被害者とでもいうべき存在であろう。したがって,ⅩのⅤという行為を示すすべがなく,Yに生じているCという変化をただ単に所有しているだけであると考えられる。

以上見てきたように,YにCという変化が生じるという結果の発生にはⅩがさまざまな形で係わっているとみられ,結果状態の部分を基本に据えて考えれば,因果連鎖上でこのような結果をもたらす始点である存在と異なるリンクによって結び付けられ,二つの単一的事象が一連の因果連鎖として形成されるのである。

2.3.5.2 “把”構文の拡張プロセス

“把”構文のネットワークの展開の基本ユニットは(23a)に示されるようなタイプの構文であると考えられる。

(24)(= 23a)小王把衣裳晾干了。

Y-CとⅩ-Ⅴという両者を結びつけるこの種の典型的な因果関係,つまりY-Cは意図性をもつⅩのⅤという働きかけによって引き起こされるという因果連鎖は,“把”構文だけでなく能動文によっても表現される。

(25)小王晾干了衣裳。(“ⅩⅤCY”)

このような事象変化は 「能動文」という形式で表現されるという言語事実から,対象に生じている変化の結果は動作主が意図的に引き起こそうとするものであるということが意味されると思われる。能動文はイベントの時間軸上の流れに沿って,他動的事態を客観的に記述するのに使われるのに対して,“把”構文は話者の主観的な理解が介在する因果関係の記述に使われ,対象の結果状態を際立たせる構文形式であるといえる。これは,ほとんどの“把”構文は,Ⅹと “把”を取り除いたあとも,残りの部分が依然として成立し,Ⅹが省略されうるという形式的特徴からも検証される。その残りの部分が 「受動者主語文」を形成し対象がどのような状況になったかという事態を表現している。

(26)小王把衣裳晾干了。→衣裳晾干了。

(27)小王把作业写完了。→作业写完了。

(28)小王把桌子搬走了。→桌子搬走了。

したがって,“把”構文のプロトタイプ事例は,ある種の事象変化は動作主によって意図的に引き起こされうるものであるという典型的な因果関係が表されるものであると考えられる。

一方,このようなプロトタイプ事例は日本語では他動詞文構造によって表されている。

(29)a.有人 把脸盆洗干净 ,到伙房打了四五斤饭和一小盆清水茄子,…。(阿城「棋王」)

b.一人が 洗面器をきれいに洗い, 炊事場から飯とゆでたナスをもらってきた。(「チャンピオン」)

(30)a.…小河很浅且水流速度很慢,用脸盆 把两坝之间的水 掏干, 可以摸到鲫鱼、黑鱼、小白鲢、泥鳅,…。(史鉄生「插队的故事」)

b. …流れが浅く緩やかなので, 堰止めたあいだの水を 洗面器で汲み出して フナ、ライギョ、ハクレン、ドジョウ、時にはタウナギを手で摘まえることができた。(「遥かなる大地」)

このように,中国語ではYに生じる何らかの変化が焦点化され,“把”構文が用いられるのに対して,日本語では原型的他動詞的叙述がなされる他動詞文構造が使われている。変化他動詞文は動作主の行為と対象に生じる変化が一体化して単一の述語動詞の意味を構成しているため,中国語のⅤC構造に対応するには,「きれいに」のような結果を示す副詞節や 「汲み出す」のような複合動詞構造を用いて表現しなければならない。

(31)(= 23b)小王把头发剪了。

日本語の介在性の他動詞文と同様,状態変化の実際の引き起こし手が含意されない文形式で,実際には主語名詞句以外の主体によって事象変化を達成したという状況を表している。日本語の場合と同じく,実際の行為者とそれに命令や指示を出す 「使役主体」との間の密接性から,換喩的な意味転移が関与していると考えられ,プロトタイプ構文の表現形式が用いられている。

(32)(= 23c)小王把地址写反了。

「宛先と差出人が反対になった」という望ましくない結果は主語名詞句のⅩが意図的に引き起こそうとするものではなく,意外で偶発的な事象変化であるといえる。非意図的な事象変化の発生という事態の記述にも,意図的な行為を含意する原型的事象構造を表す “把”構文という形式が用いられることから,換喩に基づく拡張が行われていると思われる。“地址反了”という結果は不本意ではあるが,やはり 「王さん」(の不注意)によって引き起こされてしまうことであり,このような結果の発生に 「王さん」は自ら責任を持つものと考えられる。しかし一方,このような非意図的“把”構文に対して日本語は必ずしも変化他動詞文が対応しているとは限らない。非意図的事象を表す場合の日中両語の言語化の違いについて2.5 節で述べることにする。

(33)(= 23d)小王把鞋洗湿了。

(32)における “地址写反了”という結果の発生は 「書く」という行為の結果的可能性からみれば,ある程度予見しうるものである。これに対して “鞋湿了”という事象変化は 「服を洗う」という行為の結果的可能性から,まったく予測のつかない結果であると思われる。にもかかわらず,動作主によって意図的に引き起こされるという意味構造によって規定される “把”構文で表されており,前述したように換喩的意味転移が関与していると思われる。

(34)(= 23e)去年老王又把老伴儿死了。

「王さんの連れ合いがなくなった」という事態は人のコントロールによらない内在的な変化であり,「王さん」の行為の因果関係とはなりようのないものである。「連れ合いがなくなった」という単一的変化は “把”の働きを介して不本意ながらも 「王さん」によって所有されざるをえないという事態を表している。「また連れ合いを亡くした。」という最悪の結果に,「王さん」としては何か「防止対策」を打つべきではないかという責任を問われる意味が含意されている。このパターンの構文の拡張も換喩に基づくものと考えられる。

またこのような拡張事例は日本語では自動詞構文が対応する場合がある。

(35)a.随随的大是个瞎子。…小棺材也打下了他又没死,单是 把一双眼睛瞎了。 (史鉄生「插队的故事」)

b.随随の父親は盲目である。小さな棺桶まで用意してあったのだが結局助かり、そのかわり 失明した とか。(「遥かなる大地」)

(35b)では,彼の身に起きたこのような不幸が,原因としての行為と結びつかない自律的な事態として捉えられ,「失明した」という自動詞的叙述がなされる文の形式が使われている。

以上,“Ⅹ把YⅤC” という構文において,Y-Cという事象変化の発生にⅩ-Ⅴがどのように係わっているかを分析することによって,“把”構文の拡張プロセスを明らかにしてきた。

Ⅹ-Ⅴの係わり合いが [+意図的][+動作性]である場合は原型的因果連鎖が表されるものと見なされるなら,[意図的][動作性]のいずれかの要因が欠如している拡張構文は非原型的因果連鎖が表されていると考えられる。

以上の5つのタイプの “把”構文が表す行為連鎖においては結果をもたらす行為内容こそ異なっているものの,共に何らかの行為が起因となって引き起こされる事象変化を表しているという共通性を抽出することができると思われる 6)

したがって,“把”構文のスキーマは次のように規定することができる。

(36)“把”構文のスキーマ:

何らかの行為が起因となって引き起こされる事象変化。つまり,“把”構文はある結果状態が焦点化されることを前提に,その結果の発生をもたらす何らかの行為を方法として継ぎ足すという事態認識を表す構文形式であると考えられる。

そして,(23)の構文間の拡張関係は次のようなネットワークモデルによって示される。

図 4 “把”構文の拡張ネットワーク

A:小王把衣裳晾干了。

B:小王把头发剪了。

C:“把”構文のスキーマ

D:小王把地址写反了。

E:小王把鞋洗湿了。

F:去年老王又把老伴儿死了。

太線のボックスで囲まれたAは “把”構文のプロトタイプである。BはAと,意図している結果状態であるという点で共通しているが,[-動作性]という点では素性を異にしている。DはAと,意識をもった行為である点は共通しているが,結果状態は意図されないものであるという [-意図性]という点で異なっている。さらにこのような行為のねらいから外れた非意図的な結果の発生は,行為の施行と関係のないところでの非意図的な結果の発生というEと,ただ単にその意図せぬ結果状態を所有するだけであるというFの二つの方向へと展開していく。 OVHVTTeuRvt4CjZa3h4vn2H5y+ZxHOQsBSfhXI7lg+wa6ssIFISgZ7jukkcMLNaQ

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