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1.2 本研究の理論的枠組み

日本語における周辺的自他動詞構文の拡張する動機付け,及び日中両語における自動詞·他動詞構文の言語化の相違を説明するために,どのレベルでの対応関係を掘り起せば,その異同を見極めることができるのだろうか。本研究では認知文法の基本的理論を分析の基盤にしている。

西村(1998:112)によれば認知文法を他の多くの理論から区別する大きな特徴はその文法観にあるといえる。認知文法では,文法的な知識の単位は形式と意味との組み合わせ——一種の記号——であると考えている。すなわち,文法を構成する単位はそれぞれ特定の意味をもつと考えるのである。本研究の対象である自動詞·他動詞構文との関連で言えば,これらの構文が示す文法的な振る舞いはすべてこれらの構文に特有の意味との関連で説明されるということになる。言語表現の意味は,記述対象である客観的なものや事態そのものから一義的に決まるのではなく,そのものや事態がどのように(たとえば,どういう視点から,どこに着目して,何との関連で)捉えられているかという要因を慣習的に組み込んでいると考えているのである西村(1998:113)。すなわち,異なる言語の文法構造の相違は意味上の差異を反映しており,この意味上の差異は捉え方の対立に起因するのだと捉えるものである。

このような認知文法論的観点からみれば,本研究のテーマである自動詞·他動詞構文が記述対象としての事態に対するいかなる捉え方を表しているかが決定的に重要な役割を果たすということになるため,日中両語の自動詞·他動詞構文を比較対照する際に,両言語の文法構造上の相違はどのように意味構造上の差異に対応しているのかが分析の主眼となると考える。これによって,他動性·自動性が係わる同一事態に対する日中両語の捉え方の違いが明らかになると思われる。

以下,認知文法の基本的な概念と理論を概述する。

1.2.1 事態認知モデル

他動性·自動性の問題は日常言語の事態認知と係わっている。認知言語学では外部世界の事態を,事態に係わる参与者間の相互作用として理想化し捉え,認知モデルによって端的に表している(代表的に は Croft(1990)に よ る causal chain や Lanagcker(1990)による billiard-ball model,あるいは action chainといったモデルが挙げられる。山梨 1995:252,谷口 2005:120 参照)。

(6)(= 1)a.太郎がグラスを割る。

b.子供がおもちゃを壊す。

c.猟師が熊を殺す。

(山梨 1995:239)

(6)の典型的他動詞文が反映する事態関係は認知モデルによって表示すると図 1のようになる。

図 1 典型的他動詞文の認知モデル

(6)の事態変化(「グラスが割れる」「おもちゃが壊れる」「熊が死ぬ」)はある存在からほかの存在への力の推移によって規定される。図 1は動作主(「太郎」「子供」「猟師」)がある手段によってある行為を行った結果,対象(「グラス」「おもちゃ」「熊」)に状態変化(「(グラスが)割れる」「(おもちゃが)壊れる」「(熊が)死ぬ」)が引き起こされるという事態認識のパターンを示している。

一番目のサークルは状態変化を引き起こす存在を示し,二重の矢印は状態変化を引き起こす存在の力の推移を示す。二重の矢印の向けられるサークルは動作·行為の及ぼす対象であり,それにつづく矢印は対象における変化の過程を示し,その結果状態は破線の矢印が加わるサークルによって示される。

また(7)のような典型的自動詞文は次の図 2のように表示できる。

(7)(= 2)a.グラスが割れる。

b.おもちゃが壊れる。

c.熊が死ぬ。

図 2 典型的自動詞文の認知モデル

ボックスは言語化されている部分を示し,点線のサークルと二重の矢印は意味的に含意されながら言語化されていないことを示している。

図 1の認知モデルは外部世界を理解する基本的な関係である<因果関係> を規定しており,これによって自動詞·他動詞構文に関する特徴づけや意味的拡張の動機付けが可能になる。以下,本研究ではこの認知モデルを用いて自動詞·他動詞構文の特徴づけ及び拡張の動機付けを分析する。

1.2.2 プロトタイプ理論

認知文法では 「プロトタイプ理論」と呼ばれるカテゴリー化に関する新しい考え方が採用されている。すなわちカテゴリーはプロトタイプと呼ばれる,基本的と考えられる成員を中心にして,その周辺にプロトタイプからの(何らかの原理に基づく)拡張としての非中心的な成員を配するという形で構成されている,という考え方である(西村 1998:115 参照)。

本研究との関連でいえば自動詞·他動詞構文という文法的なカテゴリーには(1)(2)のような典型的事例から(3)(4)(5)のような周辺的事例へ拡張が行われており,典型例と周辺例との間に何らかの意味上の動機付けによって関連づけられていると考えられる。

このような考え方をとることによって典型例と周辺例との間の共通性を見出すことができるだけでなく,異なる言語間の周辺例へ拡張される程度の差異も説明することができる。

1.2.3 スキーマ理論

カテゴリー化に対する認知言語学的思考はプロトタイプ理論のほかにもう一つ重要なのはスキーマ理論である。カテゴリーメンバーに当てはまる共通性(スキーマ)を抽出して,カテゴリーを規定するという考え方である。スキーマ理論とプロトタイプ理論はカテゴリー形成のそれぞれ異なった側面に焦点を当てた,互いに両立するものと位置づけられており,実際にはこの両者が同時に相互作用することで,一つのカテゴリーが構築されると考えられている(河上 1996:47,早瀬 2002:162,中村2004:199など参照)。

認知言語学ではカテゴリー化に係わる認知プロセスについて次の図 3 のように規定されている(山梨·有馬(2003:61 ~62),河上(1996:51 ~ 52),中村(2004:199 ~ 200)な ど参照)。

図 3 カテゴリー化に係わる認知プロセス

図 3に示されているように,カテゴリー化に係わる認知プロセスは,(ⅰ)スキーマに基づく事例化,(ⅱ)プロトタイプに基づく拡張,(ⅲ)具体事例に基づくスキーマ化,という三つのプロセスとして区別されている。

図 3の実線の矢印( )は,スキーマから具体事例(X,Y)への認知プロセスを示している。破線の矢印( )は,プロトタイプとしての典型事例から拡張事例への認知プロセスを示している。さらに,点線の矢印( )は,プロトタイプの典型事例と拡張事例の類似性,共通性に基づいてスキーマを抽出していく認知プロセスを示している。

スキーマ理論は自動詞·他動詞構文という文法的カテゴリーの本質的な特徴を捉えるのに重要な道具立てであり,プロトタイプ理論と同様に自動詞·他動詞構文の特徴づけを,意味的な共通性と意味的な拡張という観点から捉え直すことができる。 lcW3/t5DMeTGkolTO0+WxbOkzZwSwU8V9vOBt7xsN88LLRyqEQi/H15EHr18D85y

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