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2.4 日中両語の変化他動詞文の拡張の仕方の違い

2.2 節と2.3 節では認知文法的アプローチによって,他動的事態を反映する日中両語の表現形式の拡張の仕方を明らかにしてきたが,変化他動詞文と “把”構文は,他動的事態が規定されるプロトタイプ的な意味を共有しつつも,その拡張の方向が異なっているということが観察される。つまり,同様に他動的事態を表現する構文であるものの,その適用範囲に日中両語間で重なりとずれが見られるということである。

図 2,4が示しているように,日中両語では共にプロトタイプ的構文から行為の主体が主語名詞句と一致するかどうかによって,「介在性の他動詞文」(「太郎が工場のゴミを焼いた。」“小王把头发剪了。”)へ拡張されているが,事態の生起が主語名詞句にとって意図するものかどうかという意味的タイプになると,日中両語で非意図的他動詞文において拡張の仕方を異にしている。

日本語では 「非意図的他動詞文」は 「介在性の他動詞文」と異なる方向で,プロトタイプ的な構文から拡張されているのに対して,中国語では 「介在性の他動詞文」と同じ共通性を持った前提の下でプロトタイプ的な構文から拡張されているということが観察されている。なぜこのような違いが生じたのだろうか。

結論から言えば,両言語では因果連鎖における原因としての行為と結果としての事態との関係の緊密度が異なっていることによるものだと思われる。2.2 節で分析したように,日本語では因果連鎖における <対象> に対する <行為> と,その結果<対象> に生じる変化は分離しがたいほど一体化され,<行為> と <変化の結果> との関係は一体化することによって,単一の事態を構成すると見なされる。このような捉え方の慣習化として,形式的には原因としての行為と結果としての変化を共に表すことができる単一の述語動詞(「変化他動詞」)を用いて表現する。

例えば,「太郎が不注意から家の倉庫を焼いた。」というような場合,<焼く > という 「負の行為」も <焼ける > という結果も共に,動作主にとって非意図的([- VOL] [+ ACT])であるため,<意図性> を共有している 「介在性の他動詞文」([+ VOL] [-ACT])とでは,「意図」においても,「行為」においても正反対の振る舞いを見せている。「介在性の他動詞文」と異なった仕方での拡張になっているということはこのような異なった意味構造による必然の結果であると思われる。

一方,中国語では形式的にVC構造をとる複合動詞によって表されているように,因果連鎖における <対象> に対する <行為> と,その結果<対象> に生じる変化との関係は一体ではなく,それぞれ独立したイベントとして捉えられ,より緩やかな因果関係にあるものと見なされる。それ故に,両者が複合の事態を構成し,動作主の行為と対象の結果状態が別々に言語化されるVC構造をとる“把”構文によって同様な事態が表されている。

例えば,“小王把地址写反了。”というような場合,“写”という行為は 「王さん」にとって意図的ではあるが,“地址反了”という結果は非意図的,予期せぬものであるといえる。このように,行為と結果が別々に捉えられることによって,意図的な行為を表している点で 「介在性の他動詞文」(“小王把头发剪了。”)と共通しており,「介在性の他動詞文」と同じ仕方で拡張されていると考えられる。さらに,“小王把鞋洗湿了。”というタイプの文は,意図的な行為であって,非意図的な結果であるという点において,“小王把地址写反了。”と共通しており,この構文から拡張されている。

なお,動作主と何ら係わりを持たない内在的な事象変化までも他動詞構文によって表現される (「太郎が空襲で家財道具を焼いた。」“去年老王又把老伴儿死了。”)というタイプになると,日中両語では捉え方と表現形式との対応づけ方に共通性を有するようになり,拡張ネットワークに重なりも見られる。

このように,同一の他動的事態を描写する日中両語の他動詞構文は,他動的事態が規定される因果連鎖の <行為> と <変化の結果> がどのように捉えられるかによって,プロトタイプ的な意味を共有しつつも,その拡張の仕方が異なっているために,全体としては対照的な性格を示していると思われる。

以上の議論では “把”構文という同一の形式を用いながら,異なる事象構造が表されるという “把”構文の意味的類型化を行った上で,“把”構文の形式によってどのような異なるタイプの事象変化を表すことができるのかを明らかにした。そして,異なる意味類型の “把”構文間の拡張プロセスを分析することによって,“把”構文間に共通するスキーマを抽出し,“把”構文に統一されている事態認識の仕方を明らかにした。さらに,日中両語の他動詞構文の拡張ネットワークを対照することによって,拡張の仕方の異同を浮き彫りにし,同一の他動的事態に対する捉え方が対立しているということが明らかになった。次節では 「非意図的他動詞文」を取り上げ,日中両語の非意図的事象に関する対応形式を比較対照することによって,「非意図的事象」に対する日中両語の「捉え方」の違いを明らかにする。 O0WqxLZ/P4nm0JJ4O6p8vsaDWsd0ihceueMOb8S1IKfhhnPfEsVnoCFT7k+YrK+a

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