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2011年全国硕士研究生入学统一考试日语试题

I.基礎知識(20点)

次の文章を読んで、1~20の問いに答えなさい。答えは選択肢[A][B][C][D]から も適切なものを1つ選びなさい。

何年[1]前のことになるが、京都[2]中心にいろんな職人さん(手艺人)の仕事場を訪ねたことがある。织物の職人さん、陶器や扇子の绘付け師、人形師、そして彫り物の職人さん…まあ、全部で 二十種类ほどの手仕事場を見た

率直 に言って、職人さんというのはしばしばかなり偏屈である。こっちがいろいろ質問しても、満足に返事をして[3]。返事をした[4]、たいてい無愛想である。時には、じろりとこっちを白い目でにらみつけ、终始 無言 のまま仕事に熱中している。別に意地悪なのではない。かれらは口下手なのであり、ただ手を動かして物を作ることだけの[5]生まれたような人たちなのである。しかし、なんとなく取り付く瀬がなくて、私は、[6]、ぼんやりとかれらの手の動きを凝視し续けるという经験を缲り返した。

そんなふうに職人さんの仕事[7]を見ていて気がついたことが一つある。それは、かれらの使う道具が、あたかも手にぴったりと吸いついているかのように 自由に動いているということだ 。道具とそれを使う人間とが一体になっているのである。ぽんとその辺に置かれている[8]は、道具は一つの無生物だが、職人さんの手の中に入った瞬間、まるで生き物のように躍動し始めるのである。

彫り物をしている職人さんの仕事場には、何本、いや、何十本もの彫刻刀が並べられていて、 それを次々に取り替えながら、细かい彫り物を完成していくのだ 。職人さんはそれらの彫刻刀を取り替えるにあたって、別に視线を道具のほうに流したりはしない。さりげなく職人さんの手だけがすっと伸びて、指先がぴったりと必要な道具を捜し当てるのだ。長い間にわたって使い续けてきた彫刻刀の一本ずつが、いつも定位置にあり、その定位置は、指先が正確に記憶しているのである。

それらの道具は、見ただけでも使い込まれているのがわかる 。手のあぶらがしみこんで、木製の柄は黒く光っている。職人の手と道具とは一体化しているのである。[9]、そこでは人間と道具、主体と客体という区別はない。道具は人間の一部になっているのだ。

道具と人間とのつきあいというのは、わたしの見るところでは[10]「人格的」なのである。使い慣れて、とうてい手放すことのできないようなもので、 そういうものを持っている人は幸せなんだ 。道具というのは、人間にとっての、もの言わぬ友人たちなのである。何十本もの彫刻刀に取り巻かれている彫り物の職人は、数十人の友人に取り巻かれ、その友人たちといっしょに仕事をしている人物なのであるといってもいいだろう。 気の合った友人たち とともに仕事に熱中し、ほとんど我を忘れた状態にあるのが職人の生活というものである[11]、わたしのようなただの参観者の質問になど答えている暇のあろう[12]がない。職人が無愛想であることの意味を、わたしは、かれらの道具を見ていて理解することができたような気がする。

[1]~[12]に入れるのに最も適切なものはどれか。

1.[A]と

[B]も

[C]に

[D]から

2.[A]の

[B]で

[C]を

[D]へ

3.[A]くれない

[B]やらない

[C]あげない

[D]もらわない

4.[A]としても

[B]としたら

[C]といえば

[D]といったら

5.[A]ほどに

[B]ゆえに

[C]ままに

[D]ために

6.[A]ただ

[B]きっと

[C]かりに

[D]わずか

7.[A]ふり

[B]ぶり

[C]さま

[D]ざま

8.[A]ばかり

[B]ところ

[C]かぎり

[D]さなか

9.[A]まさか

[B]よほど

[C]たとえ

[D]もはや

10.[A]なんとか

[B]どうにも

[C]どうやら

[D]なにとぞ

11.[A]としては

[B]とすれば

[C]となっても

[D]となろうと

12.[A]こと

[B]もの

[C]ゆえ

[D]はず

13.文中「 二十種类ほどの手仕事場を見た 」の「 ほど 」と同じ使い方のものはどれか。

[A]真偽の ほど は不明だ。

[B]冗談にも ほど がある。

[C]彼女は5キロ ほど も体重が増えた。

[D]人は金持ちになる ほど けちになる。

14.文中「 自由に動いているということだ 」の「 こと 」と違った使い方のものはどれか。

[A]長江デルタに分布している水路の長さは世界一との こと だ。

[B]夫婦喧嘩のような こと だから、あまり気にしないでください。

[C]学生なら知っている こと だが、日常の成绩もとても重要なのである。

[D]羊飼というのは、羊を飼う人というより、羊の番をする人の こと だ。

15.文中「 それを次々に取り替えながら、细かい彫り物を完成していくのだ 」の「 ながら 」と同じ使い方のものはどれか。

[A]いやいや ながら 仕事をやっているしだいだ。

[B]アルバイトをし ながら 卒業までがんばった。

[C]知ってい ながら 最後まで嘘を言い続けたのだ。

[D]一绪にい ながら 口争いばかりしているのは確かだ。

16.文中「 それらの道具は、見ただけでも使い込まれているのがわかる 」の「 (ら)れる 」と同じ使い方のものはどれか。

[A]なにとぞ、お身体に十分お気をつけ られる ように。

[B]おじいさまからそのようにおっしゃ られ て困った。

[C]ふるさとにいる友人のことが懐かしく思い出さ れる

[D]子供にも、もう留守ぐらい任せ られる ようになった。

17.文中「 そういうものを持っている人は幸せなんだ 」の「 ている 」と同じ使い方のものはどれか。

[A]田中さんは黒ぶちのメガネをかけ ている

[B]幸子さんは今電話をし ている ところです。

[C]講堂で講演し ている 先生はどなたですか。

[D]考え ている うちに、结論が分かってきた。

18.文中「 気の合った友人たち 」の「 」と同じ使い方のものはどれか。

[A]この高そうな万年筆はどなた ですか。

[B]彼 亡くなった友人は映画俳優だった。

[C]昨年、花 都パリへ行ったことがある。

[D]竹が茂った庭に、金魚 いる池がある。

19.文中の「 率直 」の読み方はどれか。

[A]そつなお

[B]りつなお

[C]りっちょく

[D]そっちょく

20.文中の「 無言 」の読み方はどれか。

[A]むごん

[B]むごと

[C]ぶごん

[D]ぶごと

II.読解(55点)

A.次の文章の[一][二][三][四]を読んで、21~40の問いに答えなさい。答えは選択肢[A][B][C][D]から最も適切なものを1つ選びなさい。

[一]

この夏、わたしは5日間にわたってある小学校で「金利計算」「保険」などの授業をし、生徒の保護者にも、お小遣いのアンケートをお願いした。その结果、毎月お小遣いをあげている家庭は全体の60%という数字が出た。

こうしたデータから、お小遣いをあげることの意味が、昔と大きく違っていることがわかる。私が小学生のころ、キティちゃんの消しゴムがほしくて、アイスクリームを買うのをがまんしたものだ。そういった身近な学用品や自分が好きな物を買うのが、お小遣いの意味だった。

[ア]、今の子どもは、日用品のすべてを必要なときに親からお金をもらって買っている。なかには自分で買い物に行ったことのない生徒もいるほどだ。当然、 物の値段に実感がない 。鉛筆や消しゴムの値段を闻いてみたが、ほとんどの生徒は答えられなかった。

買い物经験の乏しさは、ほしいものを書き出すという授業にも影響した。 ほとんどの生徒が、最初は「特にほしいものがない」とペンを止めてしまった 。「何でもいいから書いてごらん」と促すと、「一戸建ての家」とか「車」「世界一周のチケット」など、日常生活とかけ離れた回答を書く生徒が多かった。

「新しい筆箱とか、かっこいい運動靴とかほしくないの」と闻いても、たいていの生徒は「いくつも持っているからいらない」と興味なさそうな返答。そもそもそういう店に足を運ばないので、どんな物を売っていて、いくらなのかイメージが湧かなかったようだ。一ヵ月のお小遣い計画を立てさせても、書けた生徒は一人もいなかった。ところが、一ヵ月に2 000円のお小遣いをもらっているという想定で、ほしい物を買うのにどう計画を立てたらいいかを計算させたところ、全員が実にすらすらと答えた。決して計算ができないわけではない。

保護者アンケートのなかに「必要なもの、ほしい物を買うよう、 お小遣いをあげても子どもは全て貯金します 。学用品やおかしは私が買っています。このままではお小遣いの意味が違うのではないかと考えてしまいます」というコメントがあった。まさに今のお小遣い事情を象徴している内容だろう。

20、30代になっても親に頼る子どもが増えているのも、お金の面で親に依存する体質からぬけられないからだ。親元にいれば、生活費の心配をする必要もなく、自分の収入は自由に使える。「限りあるお金のなかでやりくりして暮らす」能力が育たないまま、大人になった结果ともいえる。

もしかしたら親の方が、子どもたちの学ぶ機会の芽を摘んでいるのではないだろうか。治安の悪さから買い物へ行かせない、無駄づかいをさせたくないからお金を与えないといった「べからず主義」をやめ、もう少し放任する勇気をもつべきだと感じた5日間だった。

21.文中の[ア]に入れるものはどれか。

[A]なぜなら

[B]さらに

[C]したがって

[D]しかし

22.文中に「 物の値段に実感がない 」とあるが、それはなぜか。

[A]特にほしいものがないから。

[B]買い物の经験が乏しいから。

[C]学用品の値段を知らないから。

[D]あまり買い物をしすぎるから。

23.文中に「 ほとんどの生徒が…止めてしまった 」とあるが、それはなぜか。

[A]小学生の生活ではそれほどよいというものがないから。

[B]自分にとって必要なものとは何か全くわからないから。

[C]自分で何かを買うことにイメージが湧かなかったから。

[D]ほしいものを正直に書いたらしかられると思ったから。

24.文中に「 お小遣いをあげても子どもは全て貯金します 」とあるが、このアンケートを書いた保護者の気持ちとして、どれが適切か。

[A]怒りの気持ち

[B]うれしい気持ち

[C]不本意な気持ち

[D]情けない気持ち

25.子どもを育てることについて、筆者はどう考えているか。

[A]無駄づかいをさせないためにも、お金を与えないほうがいい。

[B]お金のことには、もう少し放任する勇気を持ったほうがいい。

[C]物の値段に実感を持たせるために買い物に行かせたほうがいい。

[D]治安の悪さを考慮し、子どもを買い物へ行かせないほうがいい。

[二]

幸福も不幸も、常に、いっそう幸福な状態といっそう不幸な状態との中間にある。绝対の幸福というものもなければ、绝対の不幸というものもない。もともと心持ちの問題で、しかも、その心持ちは、別に基準のない、他人の運命との比較や自分の过去との比較によるのであるから、 それは当然のことである 。他人から見てどんなに幸福と見える中にも不幸はあり、逆に、他人から見てどんなに不幸と見える中にも幸福はあるものである。人間とは、満足しない動物ともいえるもので、いかに他人から幸福そうに見えようとも、それにまったく満足しているという人間はあまりないし、それとともに、人間とは、希望に生きる動物なのであるから、いかなる不幸の中にあっても、何かの形で小さな幸福を見い出したり、作り出したりするのである。これは、人間の本来の姿なのである。 人間とは、そういうふうにつくられたものなのである

自分は幸福を求めるものでない、という者も、実際には別の形で幸福を求めているのである。世の常の、むなしい、移りやすい幸福に対して、不動の幸福、いっそう確かな幸福というものがあることを、人間はずいぶん古い昔から信じてきた。宗教も道徳も、そのむなしい、移りやすい幸福に対して、不動の幸福、いっそう確かな幸福を得る手段を教えるものであった。しかし、[ア]、幸福とは、何よりも、そのむなしい、移りやすいものであり、人々は、それを追い求めることに生活の意味を見いだしている。遠くから見ていると美しいが、とらえてみると何でもないものだ。これは、詩人たちのくり返し歌ったテーマである。

しかし、その何でもないものが、果たして何でもないものであろうか。朝起きて子どもたちといっしょに食卓に向かう。夕方帰って一碗の熱いお茶を飲む。夜になって暖かい床にはいって眠る。こういう何でもないことが、それが失われたときになって、じつに大きな幸福であったことを多くの人々が気づいているはずである。むしろ、 幸福の本体 は、そういう何でもないと考えているところのものであって、遠くから見て美しいようなものにあるのではない。それが失われて、はじめて、そこにこそ幸福の実体があると悟るのも、幸福がいつでも遠くにあるものだという心理に基づくには違いないが、いったい実体が何かと悟ることは、ほんとうに幸福になる第一歩である。

26.文中「 それは当然のことである 」の「 それ 」が指している内容はどれか。

[A]幸福も不幸も、他人からの視点によって決まってしまう。

[B]幸福も不幸も、心持ちの問題であって、基準の問題ではない。

[C]幸福とは常に不幸の中に存在し、不幸の中にこそ真の幸福がある。

[D]幸福は他人、あるいは自分の過去と現在との比較の中に存在している。

27.文中の「 人間とは、そういうふうにつくられたものなのである 」とはどういうことか。

[A]人間は満足することがないが、同時に希望に生きる動物であるということ

[B]人間は常に绝対的な幸福を追求して止まることを知らない動物であること

[C]人間は常に他人の幸福を自分の不幸と考えて満足することを知らないこと

[D]人間は他人から見て幸福に見える幸福には決して満足しようとしないこと

28.文中の[ア]に入れるものはどれか。

[A]それによって

[B]それにしては

[C]それにかけては

[D]それにもかかわらず

29.文中に「 幸福の本体 」とあるが、筆者はそれがどこに存在するかと考えているのか。

[A]常に求めているところ

[B]ふつうそう思わないところ

[C]遠ざかろうとしているところ

[D]遠くから見てもすばらしいと思うところ

30.この文章の内容に合っているものはどれか。

[A]幸福というものは常に相対的なものである。

[B]人間は常に幸福と不幸の間を移り歩いている。

[C]幸福は求めるかぎり遠くなったり近くなったりする。

[D]人間は不幸の中で幸福を求め、幸福の中で不幸を恐れている。

[三]

戦後がらりと変わった日本の祝日は、外国のそれと比べて、かなりユニークなものといえるかもしれない。「体育の日」「敬老の日」といった、宗教色や歴史的うらづけが全くなく、なんで国旗を揚げるのかもよく分からぬ日が数多いのである。これを、结局は、 休日のボーナスと思えばいい という人も少なくない。しかしそれではあまりにもいい加減であろう。国民の休日は、その日のテーマとなった問題についてだれもが、ひとときの思索を試みる日と受け取りたい。

11月3日は「文化の日」。 年配の人なら文化という言葉に、カビくさい大学の研究室を連想するかもしれない 。若い人のあるものは、テレビ·スタジオやファッションショーなどを、思い浮かべることだろう。いずれにしても、文化とはどこかでだれかの手によってつくり出され、われわれはただそれを受け入れるだけ、という考え方が一般といえそうだ。文化とは無缘の衆生、文化人などというのは自分とは別の世界の人種、と 思い込んでいる人 が少なくない。だが、果たしてそうだろうか。

むずかしい定義をぬきにして考えれば、文化とは要するに野蛮の反対。なにごとにも力が優先する、弱肉強食の世界の対極に立つのが、文化的社会といえよう。[ア]、文化国家とは、国の内外に、力による征服被征服の関係をつくらぬ国であり、その当然の帰结として平和を志向し、あらゆる戦争に断固反対せざるをえない。

核兵器に対するに、文化国家という理想をもっている——力による抗争が世界の破滅を意味するものである以上、この立場は疑いもなく正しい。だが、この立場からの発言が国際的な説得力をもつためには、まず日本がどの国からもなるほど、立派な文化国家だと認められねばなるまい。自分の国でさえ実現できぬ理想を外に向かって説いたところで、ただ白昼夢と冷笑されかねないからだ。

となると、老人をけとばして電車に乗りこむ若者、連日数十人を殺して走る車——そんな光景が、この日本にあってはならぬ道理となる。我々日本人はだれもが、力ずくの野蛮人でないという意味では、文化人にならなくてはならない。そして、それが日本の生きる道につながっている、ともいえるのである。

31.文中の「 休日のボーナスと思えばいい 」とは、どんな気持ちを現しているか。

[A]休日の意味が分からなくとも、ボーナスも休みもほしいと思う気持ち

[B]休日の意味が分からなくとも、国旗を揚げることに意味があると思う気持ち

[C]休日の意味が分からなくとも、休むことができればうれしいという気持ち

[D]休日の意味が分からなくとも、ボーナスがもらえなければ休もうと思う気持ち

32.文中の「 年配の人なら…連想するかもしれない 」とはどういうことか。

[A]文化という言葉に年配者は大学での文化研究を連想すること

[B]文化という言葉に年配者はどこか古典的なものを感じること

[C]文化という言葉に年配者は古い大学のカビくささを感じること

[D]文化という言葉に年配者はテレビによる文化宣伝を連想すること

33.文中に「 思い込んでいる人 」とあるが、それはどんな人か。

[A]文化とは無缘と思っている人たち

[B]社会各層の年配者と一部の若者たち

[C]大学で仕事をしている文化研究者たち

[D]各分野で研究に従事している文化人たち

34.文中の[ア]に入れるものはどれか。

[A]また

[B]あるいは

[C]だが

[D]ただし

35.この文章の内容に合わないものはどれか。

[A]日本は文化国家の目標に向かって努力すべきだ。

[B]力による抗争は世界的破滅をもたらす恐れがある。

[C]文化国家という理想を樹立することは無論正しい。

[D]日本は文化国家として国際的に説得力を持っている。

[四]

その日、私の乗ったJR线車内は立つ人もなく、いかにものんびりとしていた。

ドアに最も近い席で、私は西日を背に受けてあくびを我慢しながらうとうと…。と、 そんな平和 を破ったのは、今、乗ってきた初老の男の罵声であった。興奮した大きな声が響き渡り、車内は一気に緊張した空気に包まれた。おでこ(额头)に大きな绊創膏を貼ったその男。こともあろうに私の脇に立ったのである。酒の匂い付き、罵声が頭の上にふりかかってくる。——車両を移ろうか。次で降りようか。——逃げ道を探しながらもチラッと盗み見ると、つり上がった目は、私でなく、宙を睨んでいた。

闻き耳を立てると、どうも交通事故に遭って、相手の不誠実な対応に憤慨しているらしい。八つ当たり(出气、撒气)されそうな恐怖感で、ひと駅の長いこと。ようやく、駅に到着。

男は降りない。足がすくんでしまった私もそのままで、電車は走り出した。ドア口に子どもの声がした。ランドセルより小さく見える小学生たちだった。相変わらずわめいていた男をジッと見上げて、逃げようともしない子どもたち。やがて、「おじちゃん、おでこ、どうしたの?」と一人の子どもが声をかけた。…どうなることか、いざとなったら何とかしなくちゃ…私は息を飲む。

ところが、けわしい顔つきをしていた男は、意に反して、たちまち表情をくずし、「車にね、ひっかけられて、きっちゃった」と、目尻を下げたのである。

「痛かった?」

「死ぬかと思った」

「まだ、痛いの?」不安げな表情の子どもたちに、 私はシーンときてしまった 。なんて纯真で優しいんだろう…。

「もう大丈夫…」答えた男は、しばし無言の後、感極まった声で「ありがとね、ありがとね」と、何度も缲り返したのである。その喜びに満ちた顔は、シワクチャであった。

「電車通いか。事故に気をつけないと…おじさんみたいになっちゃうからね。」

「うん。」

いちいち素直にうなずいていた子どもたちは、次の駅で降りて行った。ドアにへばりついて見送る男は「ありがとね」を言い续けていた。その後、罵声はやみ、そこにはちょっと寂しげな、 ただのおじさん の姿があった。

家や職場に、男のグチを闻く人がいなかったのかもしれない。つかの間でも子どもの優しい言葉に、 男は随分と救われたことだろう

私も、乗客らも大いに救われたのである 。車内には再び平和が訪れた。

他人で、ましてや醜態を見せた男だから、私には、とうてい、声をかけるなんてできなかっただろう。しかし、身近な人にも私は、今まで思いやりのある言葉をかけなかったのではないだろうか——心をこめた会話を忘れてはいなかったか——反省材料がいっぱいだ。

以来、この貴重なふれあい場面を思い起こしては、会話の大切さを肝に銘じる私である。

36.文中の「そんな平和」とはどういうことか。

[A]乗客の表情がいかにものんびりとした感じを与える雰囲気

[B]車内が混んでいなく、ゆったりとした感じを与える雰囲気

[C]車内にはいる西日がいかにもあくびを誘ってしまう雰囲気

[D]ドアに近い席からはいってくる西日が爽やかである雰囲気

37.文中の「私はジーンときてしまった」とはどんな気持ちを現しているか。

[A]安心した気持ち

[B]興奮した気持ち

[C]憤慨した気持ち

[D]感動した気持ち

38.文中の「 ただのおじさん 」とは、どんなおじさんか。

[A]ふつうの中年男より酒好きのおじさん

[B]日ごろからただ酒ばかり飲んでいるおじさん

[C]酒を飲まないときは本当はふつうのおじさん

[D]酒を飲むとふつうの男になってしまうおじさん

39.文中に「 男は随分と救われたことだろう 」とあるが、それはなぜか。

[A]子どもの言葉に言いたかったグチも言わなくてすんだから。

[B]子どもの優しい言葉でこの痛みも感じなくなったから。

[C]子どもの纯真無邪気な言葉に自分の気持ちが慰められたから。

[D]子どもの無邪気な心に平和な車内の雰囲気を壊さずにすんだから。

40.文中に「 私も、乗客らも大いに救われたのである 」とあるが、それはどういうことか。

[A]私も乗客も子どもたちの纯真な優しさに感動するとともに、酒飲みの男に対する憎みを感じていること

[B]一時はどうなるものかと緊張したが、子どもの出現によって車内はもとの静かさにもどり、よかったと思うこと

[C]男の罵声で車内が緊張した空気に包まれたため、足がすくんでしまったが、駅に到着した後回復してよかったと思うこと

[D]酒に酔った男の出現によって、車内が一気に緊張した空気に包まれたが、子どもたちの無邪気さに男の注意力が自分たちから離れて、安心したこと

B.次の文章の下线のついた部分を中国語に訳しなさい。(3点×5=15点)

41.「 こんな田舎で、退屈しないか」と都会から訪ねて来た友人に言われて、「私たちはただの一度として退屈を覚えたことがない。退屈している暇はない」と記しているのは、イギリス人のピーター·メイル(彼德梅尔)だ 。この人はロンドンの広告業界でいいエグゼクティブとして働いていたのが、脱サラをして、南仏のプロヴァンス(普罗旺斯)に移り住んだのである。そこでの一年間12か月を色彩豊かに描いたのが、『南仏プロヴァンス12か月』であり、これは楽しい読み物だ。

ピーター·メイルは先ほどの文章に续けて、「フランスの田園生活は毎日が興味ある発見と楽しみの連续である」と述べている。

42. 確かに、この書物にはプロヴァンス地方の田舎の生活の、まことに変化に富み、また充実したありさまが、食生活、気候の変化、人々の気質と人間関係、職人の仕事様子、畑仕事など生々しくユーモアに記されている

プロヴァンスでは石を投げればグルメに当たるとピーター·メイルはいうが、その味覚に対する徹底した民度の高さは、「床磨きのムッシュー·バニョーが星三つのレストランに軒並み辛い点をつけている」ことに端的に示される。

43. この渡り職人は石の床を磨く仕事をしているが、毎日、正午になるとすぐに仕事着を脱いで身支度を整え、土地のレストランへ出かけてたっぷり2時間を昼食に当てる。「男と女の別なく食べることに異常な執念を燃やす人々」は生きる楽しみをどう味わうかよく知っている

44. 「知恵の真珠は時に思わぬところから湧いて出る。ある国では人々はスポーツに熱狂し、また、ある国では政治に夢中になる。それと同じで、フランス人が料理に情熱を燃やすことを私たちは思い知らされた。」とイギリス人夫妻が述べている

45. それにしても、例えば肉屋は肉を売るだけではない。後ろに客の列が長く伸びるのもお構いなしで、その肉をどう料理して、盛り付けはこう、付け合せは何、酒はこれこれ、とことこまかに講釈しないと気がすまないという 。まあ、私自身の最大関心事であるグルメ部分の引用が多くなったが、この本には「ノルマルマン」という言葉の示す時間観念や、挨拶のキスの大変さや役所の書类の煩雑さなど、フランスの田舎の生活が南仏の料理のこってりとしたソースの濃さを思わせる形で盛り込まれてある。久しぶりに田舎の生活を感じさせてくれた。

III.作文(25分)

46.次の指示にしたがって、450字~500字の作文を書きなさい。

近年、インターネット上でのショッピングが流行しつつあるが、どこからでも買い物ができるという便利さとともに、不都合や不法经営も少なくないようである。あなたはこのことについてどう思うか、作文に書きなさい。

注意:①自分でテーマをつけること。

②「だ·である」体で書くこと。

③汉字を使うべきところは汉字を使うこと。 l+0Buub3AW1j/BvDNJA0yRT7v5MTbN0N7seMQAZQtZMu9jvrZYxceDCJLt+Mbtwy

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