家乡吉野
城
白雪皑皑山朦胧
春来却如冬
み吉野は 山もかすみて 白雪の ふりにし里に 春はきにけり
春霭欲腾空
长空更朦胧
天香具山
耸雾中
ほのぼのと 春こそ空に 来にけらし 天の香具山 霞たなびく
山深不知春
草庵融雪挂柴门
滴答水淋淋
山ふかみ 春ともしらぬ 松の户に たえだえかかる 雪の玉水
古镇天昏昏
落雪纷纷埋脚印
雪也难挡春
かきくらし なをほふるさとの 雪のうちに 跡こそ見えね 春は来にけり
今日春来临
其时唐土也逢春
春光独好是日本
今日といへば もろこしまでも ゆく春を 都にのみと 思ひけるかな
昨日是冬天
波浪翻卷忽变脸
淡路岛山
春色现
春といへば かすみにけりな 昨日まで 波間に見えし 淡路岛山
岩间冰溶变水珠
簇拥苔逢处
急急寻出路
岩間とぢし 氷も今朝は 解け初めて 苔のしたみず 道もとむらむ
风吹雪花卷
春霞迷蒙忽转暖
春日到人间
風まぜに 雪はふりつつ しかすがに 霞たなびき 春は来にけり
春天已到来
远山落雪白皑皑
霞起云天外
時は今は 春になりぬと み雪降る 遠き山べに 霞たなびく
春日野
上草青青
草间淡雪稀零零
倏忽无踪影
春日野の 下萌えわたる 草の上に つれなく見ゆる 春の淡雪
昨日选地块
今日依然雪皑皑
嫩菜摘不来
明日からは 若菜摘まむと しめしの野に 昨日も今日も 雪はふりつつ
春日野上生绿草
不知何人插草标
采菜先预告
春日野の 草は绿に なりにけり 若菜摘まむと たれかしめけむ
摘菜少女衣婆娑
春日野上点烽火
斑斑溶残雪
若菜摘む 袖とぞ見ゆる 春日野の 飛火の野べの 雪のむら消え
竹篮盛嫩菜
赏心悦目春意来
不必去采摘
ゆきて見ぬ 人もしのべと 春の野の かたみに摘める 若菜なりけり
湿地绿油油
未摘嫩菜袖湿透
只缘日日双泪流
沢に生ふる 若菜ならねど いたづらに 年を積むにも 袖は濡れけり
志贺
古松柏
往昔子日谁人栽
代代永不衰
さざなみや 志賀の浜松 古りにけり たが世にひける 子の日なるらむ
冰川涌溪水
叮咚诱春来
黄莺出巢梅花开
谷河の うち出づる波も 声たてつ 鶯さそへ 春の山風
春来黄莺啭
遥看远方逢坂山
杉树戴雪白一片
うぐひすの 鳴けどもいまだ 降る雪に 杉の葉白き 逢坂の山
春天已到来
山坡
松叶淡雪白
看似春花开
春来ては 花とも見よと 片岡の 松の上葉に 淡雪ぞ降る
晴空卷向山
远处桧林日光灿
雪落小松原
まきもくの 檜原のいまだ 曇らねば 小松が原に 淡雪ぞ降る
今日阴间晴
春季天气多不定
晴空雪飘零
今さらに 雪降らめやも かげろふの 燃ゆる春日と なりにしものを
故都春日野
春来白梅撒白雪
梅雪难分别
いづれをか 花とは分かむ 故郷の 春日の原に まだ消えぬ雪
长空月儿明
欲雪未雪还是晴
春寒风更清
空はなを かすみもやらず 風さえて 雪げにくもる 春のよの月
春月出深山
雪隙云间时隐现
清光带微寒
山深み なほ影寒むし 春の月 空かき曇り 雪は降りつつ
三岛江
上芦苇荡
春风欲催芦花放
霜落泛白光
三島江や 霜もまだ干ぬ 蘆の葉に つのぐむほどの 春風ぞ吹く
空中悬残月
难波江上潮起落
芦荡漾白波
夕月夜 潮満ち来らし 難波江の 蘆の若葉を 越ゆる白波
春融高山雪
雪水涌动清泷河
汩汩荡白波
降り積みし 高嶺のみ雪 解けにけり 清滝川の 水の白波
雪花任飘洒
落在梅枝亦非花
难挡春意发
梅が枝に ものうきほどに 散る雪を 花ともいはじ 春の名立てに
春来山中行
依山搭起一草厅
朝夕听黄莺
あづさゆみ 春山近く 家居して たえず聞きつる 鶯の声
淡雪飘飘时
黄莺鸣啭展白翅
莺雪落梅枝
梅が枝に 鳴きてうつろふ 鶯の 羽根しろたへに 淡雪ぞ降る
严冬栖古巢
黄莺冰泪已溶消
春来可知否
うぐひすの なみだのつらら うち解けて 古巣ながらや 春を知るらむ
瀑布挂山岬
水边蕨菜正萌芽
春来万物发
岩そそく 垂水の上の さわらびの 萌え出づる春に なりにけるかな
拂晓富士山
喷烟袅袅飘天边
共春霞一片
天の原 富士の煙の 春の色の 霞になびく あけぼのの空
朝霞深且浓
室八岛
上水汽重
蒙蒙蔽长空
朝霞 深かく見ゆるや 煙立たつ 室の八島の わたりなるらむ
名户
海岸放眼望
海雾沐日光
白浪荡夕阳
なごの海の 霞の間より ながむれば 入る日をあらふ 沖つしらなみ
远望山下雾茫茫
水无濑川
长流淌
秋思何绵长
見わたせば 山もとかすむ 水無瀬川 ゆふべは秋と なに思ひけむ
春霞蒙蒙间
旭日将现末松山
横云飘翩翩
霞立つ 末の松山 ほのぼのと 波にはなるる 横雲の空
一枕黄粱度春眠
醒来举目看
山头横云正飘散
春の夜の 夢の浮橋 とだえして 峰に别かるる 横雲の空
仰面看春潮
梅花不开心头焦
此情梅树可知晓?
知るらめや 霞の空を ながめつつ 花もにほはぬ 春をなげくと
梅香飘长空
天阴欲晴雾蒙蒙
明月挂苍穹
大空は 梅のにほひに かすみつつ 曇りもはてぬ 春の夜の月
晨起欲折梅
却见枝头白绒绒
雪中一点红
折られけり 紅にほふ 梅の花 今朝白妙に 雪は降れれど
梅花满篱笆
漫步街巷只赏花
不问是谁家
あるじをば たれとも分かず 春はただ 垣根の梅を 尋ねてぞ見る
远处梅花开
馨香萦绕满心怀
香自何处来
心あらば と問はましものを 梅が香に たが里よりか にほひ来つらむ
檐下冷月光
梅花依旧香
怀人不觉泪沾裳
梅の花 にほひをうつす 袖の上に 軒漏る月の 影ぞあらそふ
对梅忆旧事
梅也不回音
唯有月光照泪襟
梅が香に 昔を問へば 春の月 答へぬ影ぞ 袖にうつれる
欲问夕时月
是否梅花吐芬芳
触袖即沾香
梅の花 たが袖ふれし にほひぞと 春や昔の 月に問はばや
梅花正香馨
睹花忆故人
春宵望月思念深
梅の花 あかぬ色香も 昔にて おなじ形見の 春の夜の月
想见难见君
眼见梅花如见人
无花难慰思念心
見ぬ人に よそへて見つる 梅の花 散りなむのちの なぐさめぞなき
梅花正惹人
春来最牵心
不知花香熏何人
春ごとに 心をしむる 花の枝に たがなをざりの 袖かふれつる
风吹梅花送芬芳
雪片沁花香
纷纷落衣裳
梅散らす 風も越えてや 吹きつらむ かほれる雪の 袖に乱るる
人疏远时花也衰
此时梅花正盛开
殷殷待客来
とめ来かし 梅盛りなる わが宿を うときも人は 折りにこそよれ
檐下观梅遣惆怅
唯愿我身作古时
梅花勿相忘
ながめつる 今日は昔に なりぬとも 軒端の梅は われを忘るな
梅花已凋衰
衣袖梅香在
春风习习拂袖来
散りぬれば にほひばかりを 梅の花 ありとや袖に 春風の吹く
唯君能识芳
梅花绽放我独赏
可惜不见君来访
ひとりのみ ながめて散りぬ 梅の花 知るばかりなる 人は訪ひ来で
不明又不暗
春月朦胧挂云端
美妙不可言
照りもせず 曇りもはてぬ 春の夜の 朧月夜に しく物ぞなき
春夜抹天蓝
繁花朦胧月色暗
最美在春天
あさみどり 花もひとつに かすみつつ おぼろに見ゆる 春の夜の月
难波
云雾中
不朦胧时也朦胧
望月亦惺忪
難波潟 かすまぬ波も かすみけり うつるも曇る 朧月夜に
破晓月朦胧
水田上空雁北行
哀鸣一声声
今はとて たのむの雁も うちわびぬ 朧月夜の あけぼのの空
大雁正北归
破晓哀鸣最伤悲
听之欲落泪
聞く人ぞ 涙は落つる 帰る雁 鳴きてゆくなる あけぼのの空
夜深云遮路
北飞大雁似迷途
哀鸣声不住
故郷に 帰るかへるかりがね さ夜更けて 雲路にまよふ 声き聞ゆなり
寄语北归雁
莫忘风吹稻叶卷
来年再复还
忘るなよ たのむの沢を たつ雁も いな葉の風の 秋の夕暮
如今雁北归
抛舍花月头不回
花月徒伤悲
帰る雁 今はの心 ありあけに 月と花との 名こそ惜しけれ
霜天奋飞多劳顿
恰逢春来雨纷纷
为雁洗风尘
霜まよふ 空にしほれし かりがねの 帰るつばさに 春雨ぞ降る
寂寞难耐时
春雨绵绵季
屋檐忍草
雨滴滴
つくづくと 春のながめの 寂しきは しのぶにつたふ 軒の玉水
绿山把水染
春雨如丝线
洒向池塘成锦缎
水の面に 綾織りみだる 春雨や 山の緑を なべて染むらん
山岩苔藓常年绿
更待染春雨
新绿添几许
常磐なる 山の岩根に むす苔の 染めぬ绿に 春雨ぞ降る
喜雨来春天
农夫悠悠享清闲
信凭雨水注秧田
雨降れば 小田のますらを いとまあれや 苗代水を 空にまかせて
当春雨泠泠
青柳沐雨荡秋风
枝条如丝色更青
春雨の ふりそめしより 青柳の 系の绿ぞ 色まさりける
又是一春天
青柳成荫街两边
柳下人安闲
うちなびき 春は来にけり 青柳の 影ふむ道に 人のやすらふ
吉野大河深
两岸古柳未成荫
已觉春来临
み吉野 の大川のべの 古柳 荫こそ見えね 春めきにけり
大风吹柳在岸堤
波波柳浪伏又起
延展如草席
嵐ふく 岸のやなぎの いなむしろ 織り敷く波に まかせてぞ見る
高濑舟
上过码头
柳色青青一薮薮
远霞隔岸柳
高瀬さす 六田の淀の やなぎはら 緑も深かく かすむ春かな
春风吹卷云雾翻
雾中青柳依稀见
枝条乱飐飐
春風の 霞吹き解く 绝え間より 乱れてなびく 青柳の系
远处白云翻
云隙青柳见
春风正度葛城山
白雲の 絶え間になびく 青柳の 葛城山に 春風ぞ吹く
露珠缀青柳
似白玉晶莹剔透
年年春春有
青柳の 系にたまぬく 白露の 知らず幾世の 春か経ぬらむ
野外生嫩草
草稀之处雪未消
草深残雪少
薄く濃き 野辺の緑の 若草に 跡まで見ゆる 雪のむら消え
荒地生艾蒿
去年收割留旧茬
逢春发新芽
荒小田の 去年の古跡の 古蓬 今は春べと ひこばへにけり
野火烧不尽
春日野上草又生
不负“春日”名
焼やかずとも 草はもえなむ 春日野を ただ春の日に まかせたらなむ
吉野山上当春时
雪片纷纷落樱枝
今年花开迟
吉野山 桜が枝に 雪ちりて 花迟げなる 年にもあるかな
众人来春山
急待樱花绽开颜
不觉已数天
桜花 咲かばまづ見むと 思ふ間に 日数経にけり 春の山里
我心向春山
心系樱花魂梦牵
一天又一天
わが心 春の山べに あくがれて ながながし日を 今日も暮しつ
春山花掩路
不知自身在何处
欲向黄莺借花屋
思ふどち そことも知らず ゆき暮れぬ 花の宿かせ 野べの鶯
樱花开鲜艳
天空迷蒙春雾淡
春色正弥漫
いま桜 咲きぬと見えて うす曇り 春にかすめる 世のけしきかな
坐卧不安起身看
细看春雨连绵绵
轻轻撩花瓣
卧して思ひ 起きてながむる 春雨に 花の下紐 いかに解くらむ
来者开心颜
去者多留恋
春霞弥漫初樱绽
ゆかむ人 来む人しのべ はるがすみ 立田の山の 初さくらばな
又上吉野山
去年路标已不见
再踏新径寻花颜
吉野山 去年のしほりの 道かへて まだ見ぬかたの 花を尋ねむ
葛城高间山
樱花正烂漫
看似白云起立田
葛城や 高間の桜 咲きにけり 立田の奥に かかる白雲
古都石上
再游览
昔日折樱插发簪
如今花依然
いそのかみ 古るき都を 来てみれば 昔かざしし 花咲きにけり
但愿春常在
眼前总有樱花开
妍妍永不衰
春にのみ 年はあらなん 荒小田を かへすがへすも 花を見るべく
立田山上八重樱
白云白花难分清
折花看分明
白雲の 立田の山の 八重桜 いづれを花と わきて折りけん
白云叠重重
立田山上春意浓
花香飘荡小仓峰
白雲の 春はかさねて 立田山 小倉のみねに 花にほふらし
樱花飘香一缕缕
吉野古都
白云聚
久久不散去
吉野山 花やさかりに にほふらん 故鄉去えぬ 峰の白雪
翻越几重山
回头看樱花烂漫
似白云层叠翻卷
岩根踏み かさなる山を 分けすてて 花も幾重の 跡の白雲
流连花枝间
不觉天向晚
忽见月亮挂山巅
尋ねきて 花に暮らせる 木の間より 待つとしもなき 山の端の月
故乡冷清清
花开自凋零
唯有含露任春风
散り散らず 人も尋ねぬ 故郷の 露けき花に 春風ぞ吹く
石上布留樱
年年花开盛
不忘昔人栽培情
いそのかみ 布留野の桜 たれ植へて 春は忘れぬ 形見なるらむ
踏草寻花行
再来吉野城
春日旧宫又黎明
花ぞ見る 道の芝草 踏みわけて 吉野の宫の 春のあけぼの
山樱正烂漫
不与朝阳争光艳
看似白雪团
朝日影 にほへる山の 桜ばな つれなく消えぬ 雪かとぞ見る