蒲松齢
田中貢太郎訳
予(わたし)(聊斎志異の著者、蒲松齢)の姉の夫の祖父に宋公、諱をといった者があった。それは村の給費生であったが、ある日病気で寝ていると、役人が牒(つうちじょう)を持ち、額(ひたい)に白毛のある馬を牽(ひ)いて来て、
「どうか試験にいってくださるように。」
といった。宋公は、
「まだ試験の時期じゃない。何の試験をするのだ。」
といって承知しなかった。役人はそれには返事をせずに、ただどうかいってくれというので、しかたなしに病をおして馬に乗ってついていった。