卯月朔日
、御山
に詣拝す。往昔此御山を「二荒山」
と書しを、空海大師
開基
の時、「日光」⑥と改給ふ。千歳未来をさとり給ふにや、今此御光一天にかかやきて、恩沢八荒にあふれ、四民安堵の栖、穏なり。猶、憚多くて、筆をさし置ぬ?
あらたうと青葉若葉の日の光
黒髪山
は霞かかりて雪いまだ白し。
剃捨て黒髪山に衣更
曾良
曽良は河合氏にして惣五郎と云へり。芭蕉の下葉に軒をならべて、予が薪水の労をたすく。このたび松しま·象潟
の眺共にせん事を悦び、且は羇旅の難をいたはらんと、旅立暁、髪を剃て墨染にさまをかえ、惣五を改て宗悟とす。仍て黒髪山の句有。「衣更」の二字力ありてきこゆ。