ここは、サンフランソウキョウという 都 市 だ。
うす 暗 いレンガの 通 路 を 少 年 が 歩 いている。
名 前 はヒロ。十四 歳 。 小 さなロボットをかかえ、 倉 庫 に 入 っていく。
中 では、 自 分 のロボットを 戦 わせ、 勝 てば 賞 金 を 手 にできる、‘ロボット・ファイト’が 行 われていた。
大 勢 が、 試 合 を 見 ている。リングでは、ひとりの 大 男 、ヤマが、つぎつぎと 対 戦 相 手 を 負 かしていた。ヤマは 負 け 知 らずで、すでに 大 金 をかせいでいた。
‘ヤーマ!ヤーマ!’
リングの 周 りで、 男 たちが 叫 んでいる。
ヤマのロボットには、 片 手 にかぎ 爪 、 片 手 に 回 転 式 ノコギリがついている。どんなロボットが 対 戦 相 手 だろうと、あっというまに、めった 切 りにしてしまう。 負 けたロボットが、リングのそばで 山 積 みになっていた。
ヒロが 会 場 に 入 ってきた 時 も、 相 手 のロボットをこなごなにして、 賞 金 を 手 にしたところだった。
ヤマはじまんたっぷりに、 大 声 で 叫 んだ。
‘さあ、 次 に 戦 うやつはだれだ?おれのリトル・ヤマと、リングで 一 戦 やろうって、 肝 っ 玉 のすわったやつはいないのか?’
みんな 全 戦 全 勝 のヤマにおそれをなして、だれも 手 をあげない。あとずさりするものばかりだ。
‘ふん。つまんねえな。なあ、リトル・ヤマ。’
ヤマは、 自 分 のロボット、リトル・ヤマの 背 中 をぽんとたたいた。
その 時 、 人 だかりの 中 から 声 があがった。
‘ねえ、ぼく、やってみてもいいかな? 自 分 で 作 ったロボットがあるんだ。’
全 員 が、 声 のするほうをいっせいに 注 目 する。そこにいた 少 年 を 見 て、ヤマは 大 笑 い。
すると、 審 判 の 男 がいった。
‘それはいいが、 出 場 するには、 金 が 必 要 なんだぞ! 金 はあるのか?’
ヒロは、ポケットから 金 を 出 した。
‘ほら、これでできる?’
ヤマは、 目 の 前 にいる 小 さな 少 年 を 見 ていった。
‘ちっこいの、てめえの 名 前 はなんだ?’
‘ヒロ・ハマダ。’
すると、 見 ていたものたちが、つぎつぎとふたりの 戦 いに 金 をかけはじめた。
ヒロは、ヤマのロボットよりも、うんと 小 さなロボットを 持 ちあげ、リング 上 に 置 いた。
‘ふん、また、ひともうけ、してやるぜ。’
ヤマは 自 信 たっぷりに、リトル・ヤマをリングの 反 対 がわに 置 く。
戦 い 開 始 の 合 図 がでたとたん、あっというまに、リトル・ヤマは、ヒロのロボットを 投 げとばした。いっしゅんのうちに、ヒロのロボットは、はねとばされて 負 けてしまった。
ヤマは、せせら 笑 いしながら、 勝者 のもらう 金 を 受 けとり、ほこらしげにしている。ヒロは、 自 分 のロボットをだきかかえていった。
‘ねえ、 今 回 がはじめてだったんだ。もう 一 度 、 戦 わせてよ。’
ヤマは、あきれた 顔 をしてヒロにいった。
‘こりないやつだな。あっさり 負 けをみとめたほうが 身 のためだ!それに、 戦 うには、また 金 が 必 要 なんだぞ。’
ヒロは 輪 ゴムでとめた 札 を 出 した。ふたたびゲームの 始 まりだ。ヤマはみんなに 聞 こえるようにいった。
‘ぶっつぶしてやる!’
ヒロの 目 つきが 変 わった。 自 分 のロボットを‘ファイト・モード’に 切 りかえた。ヒロのロボットの 顔 が 回 転 し、こわい 顔 つきになった。
すると、リトル・ヤマは、すばやいうごきでヒロのロボットにとっしんし、 両 手 の 武 器 でヒロのロボットをばらばらにした。
見 ていた 連 中 は、 大 声 でさわぎ、ヤマは、 勝 ったと 思 いこみ、にやりと 笑 った。その時、ヒロがリモコンのハンドルをうごかした。
ヒロの 小 さなロボットは、 元 にもどり、ヒロの 命 令 で、リトル・ヤマにおそいかかった。
今 度 のヒロのロボットは、 何 度 切 っても、また 元 にもどる。ぎゃくに、 攻 撃 されたリトル・ヤマが、こなごなになった。
ヒロのロボットは 勝 利 し、ぎこちなくおじぎをした。ヤマは、 信 じられずに、ぼうぜんとしている。
‘い、いったい、 何 が 起 きたんだ?おれの、ロボットが……。 今 まで、 負 けたこと、なかったのに……。’
ヒロは、にっこりと 笑 っていった。
‘ぼくも 勝 てるなんて、びっくりだよ。まぐれだよね。もう 一 回 やる?’
ヤマは 怒 りだした。
‘おまえ、なんか、いかさましたな!
リトル・ヤマが 負 けるわけねえ!そのロボットを、よこすんだ!’
ヤマは、 手 下 といっしょに、ヒロにつめよる。
‘おじさんの 気 持 ちはわかるけどさ。ぼくは、ロボットを 作 るのが 得 意 なんだ。なんなら 勝 てるロボットの 作 り 方 を、 教 えてあげてもいいよ。’
しかし、ヒロは、 大 男 たちに 追 いつめられてしまった。
‘だ、だからさ。ぼくは、いかさまなんてしてないんだ。おじさんのロボットが、ガラクタだったんだよ。’
‘つべこべいうな。ほら、おまえのロボットをよこせ!’
ヒロは 自 分 のロボットをヤマにわたした。
‘おまえら、あいつをぶちのめせ!’
ヤマが 手 下 にいった。そして、 手 下 が、まさにおそいかかろうとしたその 時 、とつぜんバイクが 乗 りこんできて、ヒロとヤマの 間 に 割 りこみ、 急 停 止 した。
ヘルメットをかぶってはいたが、 兄 のタダシだとわかった。
タダシは、ヒロをうしろの 座 席 に 乗 せると、ヘルメットをわたした。
‘えっ、これ、かぶるの?’
ヒロは、いやそうに 返 事 した。
‘しっかり、つかまってろ!’
タダシは、ヒロがヘルメットをかぶると、バイクを 急 発 進 させた。
ヒロはリモコンを 使 って、 自 分 のロボットを 呼 びよせ、ぎゅっと 手 にかかえた。
‘ 返 してもらうよ。これはぼくのだから。’
それと 同 時 に、バイクは 倉 庫 から 飛 びだした。