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二 文の成分

(一)主題

1.主題は平たく言えば文の題目である。文は何かについて述べるものであるが、その述べられ、つまり判断·叙述·描写の対象を取り立てて主題と呼ぶ。

2.注意すべきこと

①主題は既知の情報でなければならない。つまり主題は話し手にとっても、聞き手にとっても知っているものごとでなければならない。

○ゆうべ雨が降った。 雨は 明け方止んだ。

(「雨は」は前文に出た雨である)

雨は 水滴である。

(「雨」は誰もが知っているものである)

次郎は 仕事で忙しい。

(「次郎」という人を聞き手が知っているのでなければ何を言っているか分からない。)

②文中のどの成分も主題になり得る。

山田さんは きのう図書館から歴史の本を借りた。

(「山田さん」を主題にする)

歴史の本は 山田さんがきのう図書館から借りた。

(「歴史の本」を主題にする)

きのうは 山田さんが図書館から歴史の本を借りた。

(「きのう」を主題にする)

図書館からは 山田さんがきのう歴史の本を借りた。

(「図書館」を主題にする)

四つの文のいずれも「山田さんがきのう図書館から歴史の本を借りた」という事実を伝える文があるが、話し手の関心の寄せ次第で何を主題にするかは彼の自由に任せる。従って主題は格と一義的な関係を持たず、格を超越したものである。

格助詞の中で「ガ」と「ヲ」だけは「は」とともに現われることができない。「は」が用いられる場合、「ガ」と「ヲ」は表現されない。他の格助詞は「は」とともに現われうる。この場合、「は」は格助詞に後続する。例えば「図書館からは」「日本では」。

③日本語では、主題を持つ文(「有題文」)と主題を持たない文(「無題文」)という二種類がある。この区別は非常に重要である。

○雨が降っている。

○外に誰かがいる。

○バスが来た。

○ほら、雪が真っ白だね。(以上、無題文)

○日本人は勤勉だ。

○花子は忙しい。

○雪は白い。(以上、有題文)

文が有題文になるか無題文になるかは、述語が状態述語であるか動態述語であるかに深く関係する。述語が状態述語である文は、一般に、有題文になる。(上の有題文参照)この場合、述語は主題の属性(性質や特徴)を表す。

動態述語であっても、人やものの属性を表すときは、有題文になる。例えば、

○新幹線は時速200キロぐらいで走る。

○刺身は生で食べる。

状態述語の文が主題を表す形式を持たない場合としては、後述の現象文の外に主として、主題が省略されている場合と、有題文の述部が主語になる「転位文」の場合である。

○今、忙しいですか。(「あなたは」のような主題が省略されている。)

○鈴木さんがここの責任者です。(「ここの責任者は鈴木です。」の意味。すなわち有題文の述題の部分(鈴木さん)が「主語」になり、その主題(ここの責任者)が述語になっている、というような形の表現である。このような文を「転位文」と呼ぶ。)

述語が動態述語である場合は、有題文にも無題文にもなり得る。このうち、無題になるのは、客観的に観察される事態をそのまま描写する場合である。主観を加えないで現象をありのまま描写する文という意味で、この種の文は「現象文」などと呼ばれる。

○電車が来た。

○日が昇った。

○突然、雨が降り出した。

○空が晴れた。

○きのうの午後、四郎が訪ねて来た。

○もう授業が始まった。

なお、述語が状態述語であっても、一時的な状態の存在を表す場合は、現象文になることができる。

○雪が降っている。

○教室に誰かがいる。

○近所が火事だ。

○空が真っ暗だ。

④主題は多くは助詞「は」で示すが、外にも「も」「なら」「って」「ったら」「たら」などで示すことがある。「も」のほかは、主として話しことばで用いられる。

「も」は、主に、類似した事柄を列挙したり、同様の事柄がまだあることを言外に表したりする場合に用いられる。

○松島も日本三景の一つである。

(日本三景に松島以外のところがある)

○花子からも返事がなかった。

(返事がなかった人に花子以外の人がいる)

○今日も雨降だ。

(きのうは雨だった)

「なら」は主に、相手が持ちだしたものごとを主題として情報を与える場合に用いられる。

○A:ドイツ語の通訳さがしているんだけど。

B:ドイツ語なら、田中さんがいいですよ。

○A:ここから北京まで飛行機で1時間かかりますか。

B:飛行機なら1時間もかかりません。

○A:このくつしたは3千円で買えますね。

B:そのくつしたなら2千円もかかりません。

「って」は、定義や説明を加える場合に用いる。例えば、ことばの性質自体に関して説明を加えたい場合や、相手の使ったことばの意味や名前が指し示す対象が不明の場合に用いる。

○富士山って、遠くから見ているほうがきれいね。

(=富士山という山は)

○A:山田さんに会ったよ。

○B:山田さんって、どの山田さん。

○あの人のおかあさんってどんな人かしら。

文章体では、「って」の代わりに「とは」などを用いる。

○民主主義とは何か。

○田村とは、あの田村のことであろうか。

「ったら」は、予想外だという気持ちをこめて、話題として取り上げる場合に用いられる。

○山田先生ったら、案外親切なのね。

○あの子ったら、親の言うことなんか、ちっとも聞かないんだから。

○私ったら、また間違えちゃった。

(二)主語

1.主語は動きや状態の主体を表す。すなわち、「何がどうする」「何はどうである」の「何」に当たる語である。

会議が 始まった。

鳥が 啼く。

新しい切手が 発行された。

(以上動きの主体)

力が 強い。

空が 真っ暗だ。

田島が 班長だ。

○日本には 火山と温泉が たくさんある。

○あの山には 誰もが 途中までしか登れなかった。

(以上状態の主体)

2.注意すべきこと

①典型的には「が」で主語を示すが、外の助詞を用いることもある。

指導部で 決めた方針。

○そんな仕事は 子供にも 勤まります。

○鈴木さんには あなたから 伝えてください。

水野先生には もうお帰りになりました。

(文中の「には」は「におかれては」と同じで、主語に対する尊敬表現である)

市政府でも 環境整備を重要視しております。

(「でも」は「においても」と同じである)

②格助詞「が」には状態の対象を表す用法もある。この用法は「わかる」「要る」「上手だ」「必要だ」「ほしい」「したい」など能力、必要、感情を表す語を述語にするが、厳密な意味では主語ではない。これを「対象語」と呼ぶこともある。

願望や一部の心理作用

紅茶が 飲みたい。

野球が したい。

日本語が 分かる。

母が 恋しい。

子供の頃が 懐かしい。

可能、能力など

○兄は ドイツ語が 出来る。

○私は 10キロ泳ぐことが できる。

○田中君は 三ヵ国語を話すことが できる。

○この川で 鯉を釣ることが できる。

○石炭から いろいろな薬品を取ることが できる。

愛憎の感情

○ぼくは 数学が 好きだ。

○花子の どんな所が 好きですか。

○私は ギョーザが 大好きです。

○私は けじけじが 大嫌いです。

○私は あいつが 憎い。

③同じく主語も、主観を加えないで現象をありのまま描写する文(これを「中立叙述」という「現象文」)と、主語を特に強調する文(これを「特定·排他」という。)とでは、文法的意味が違う。前者は文全体が新しい情報(未知の情報)を伝えるのに対して、後者は主語だけが新しい情報を伝える。

あの人が 鈴木さんだ。

(「鈴木さんはあの人だ」の意味の転位文)

○(「誰がこの仕事を担当しますか」に答えて)

森田さんが 担当します。

「現象文」については、「主題」の2の③で述べたので、詳述することを省く。

④主語のない文もある。

○もう10時だ。

○2に3をかけると6になる。

○黒板に「明日は休み」と書いてあった。

○曇り空になった。

⑤「XはYが…」のタイプの文では、「Xは」が主題で、「Yが…」はその主題に対する解説である。解説の部分を「述題」ともいう。この場合、述題はたいてい主題の一部分か(例えば「象は鼻が長い」)、主題と関係の密接な事柄(例えば「パンは僕が食べた」)である。

○神戸は夜景がきれいだ。

○日本語は文字が複雑だ。

○中国は土地が広々としている。

○北京は秋が涼しい。

○太郎は背が高い。

⑥「が」と「は」の使い分けがよく問題にされるが、以上の説明でも分るように、主題と主語は文法的機能を異にする成分である。

(三)述語

1.述語は、文の中で述べ、説明する役割を果し、文末に位置して、他の成分を統括する最も重要な成分である。

2.述語になるのは、動詞(+附属詞)、形容詞(形容動詞を含む。以下同じ)、名詞(+だ)である。

3.述語の機能は、a述語となる語自身の意味を表す。b他の成分を統括して文を結ぶ。c文のムードを付与する、の三つである。

○ゆうべのパーティで鈴木さんが上田さんに私を紹介した。

この文では「紹介した」が述語であるが、それがa「未知の人間を引き合わせる」という動詞の意味を表す。そして、b「ゆうべのパーティで」「鈴木さんが」「上田さんに」「私を」を統括して事柄の叙述を完成する。さらに、c「紹介した」という動詞の過去形で話し手がその事柄を確認するムードを表す。(なお、統括の機能は語幹に寓し、活用形と関係がない。)

4.述語を「動態述語」と「状態述語」に分類できる。(「主題」の2の③参照)

①動態術語は動作を表す動詞からなり、テンス、アスペクト、ヴォイスの文法的カテゴリーを持つ。

状態述語は形容詞、名詞+だ、状態を表す動詞(例えば「ある」「いる」「できる」など)、稀には一部の副詞(例えば「今日はもうくたくただ」)からなる。状態述語もテンスはあるが、アスペクト、ヴォイスはない。

②動態述語はしばしば多種多様の補足語を必要とし、状態述語は補足語との関係がわりと簡単である。その代わり、状態述語になる形容詞には「強い」「長い」「勤勉だ」「高価だ」など、人やものの属性を表す「属性形容詞」と「ほしい」「懐かしい」「かゆい」「いやだ」など、感情·感覚を表す「感情形容詞」の区別がある。感情形容詞は、人の内面の状態を表す点で主観性の強い表現である。したがって、感情形容詞を述語とする文の主体は普通、一人称(疑問文では、二人称)である。

○私は歯が痛い。

○姉は歯が痛い。(×)

○私はパソコンがほしい。

○弟はパソコンがほしい。(×)

○君はパソコンがほしいですか。

○君はパソコンがほしい。(×)

○弟はパソコンがほしいそうだ。

○弟はパソコンがほしいのだ。

(最後の二例は、感情の直接表出でなく、外からの観察、説明なので正しい)

感情形容詞は、場合によっては属性形容詞として用いられることがある。この場合、人の感情·感覚を引き起こすものの属性が問題にされる。

○水虫はかゆい。

○猛獣は恐ろしい。

(四)補足語

1.文の組み立てにおいて述語を補うものを補足語と呼ぶ。例えば、「太郎がその犬をポンと名づけた」では「犬を」と「ポンと」がなければ、述語である「名づけた」の意味の表現は不完全である。

2.補足語は「名詞+格助詞」からなる。なに格の補足を必須とするかは、述語の意味によって違う。

①ヲ格補足語。ヲ格には、動作や感情を向ける対象を表す用法、移動の場所(通り道)を表す用法、移動の起点を表す用法がある。

動作や感情を向ける対象を表す

○学生は図書館で 本を 読みます。

子供を かわいがる。

○そろそろ 会議を 始めます。

移動の場所を表す

歩道を 歩くようにしてください。

○冬休みには、 ハワイを 旅行してきました。

○汽車は ふみきりを 通り、 鉄橋を わたる。

移動の起点を表す

○私は毎朝8時に 家を 出て、学校へ行きます。

○山田さんは今年の3月 大学を 卒業した。

○兄は渋谷で 電車を 降りた。

②ニ格補足語。ニ格は主として、人やものの存在場所、所有者、移動の着点、動作の相手、動作の対象、状態の対象、原因、移動動作の目的、事態の時を表す。

人やものの存在場所を表す

山に 住む。

つくえの上に 本がある。

砂場に 子供がいる。

庭に 大きな池がある。

所有者を表す

あなたには 兄弟がありますか。

移動の着点を表す

○私たちはようやく チベットに 到着した。

椅子に こしかけなさい。

タクシーに 乗った。

動作の相手を表す

友達に あう。

先生に 教えてもらった。

妹に ピアノを教える。

動作の対象を表す。

私に 遠慮しないでください。

母に 甘える。

○我々は 信頼の回復に 努めなければならない。

状態の対象を表す。

○田中さんは 中国文化に 明るい。

○私は この成績に 満足だ。

○運動は 体に いいです。

状態の対象を「ニ」格で表す述語には主として、「親切だ」「冷たい」のような、対人態度を表す形容詞、「満足だ」「熱心だ」のような、物事に対する態度を表す形容詞、「強い」「詳しい」のような、能力を表す形容詞がある。

原因を表す

○家屋が 強い風に 倒壊した。

○きのうは珍しく 酒に 酔った。

移動動作の目的を表す

映画を見に 行く。

調査に 赴く。

○兄は つりに 出かけた。

事態の時を表す

4時に 出発する。

○この研究会はいつも 土曜日に 開かれる。

③カラ格補足語。カラ格は、移動の起点、受け取りの動作の相手(ものの出どころ)、移動の起点としての動作の主体、時の起点、出来事の発端としての原因、判断の根拠、原料を表す。

移動の起点を表す

○さて、 何から 始めようか。

北京から 飛行機で行った。

ポケットから パスポートを取り出した。

受け取りの動作の相手を表す

○次郎は 叔父から 小遣いをもらった。

父から 毎月お金を送ってもらう。

○日本語は 水野先生から 教わりました。

移動の起点としての動作の主体を表す

○鈴木さんには あなたから 伝えてください。

時の起点を表す

12日から 冬休みです。

○会議は 9時から 始まる。

○この店は朝 7時30分から 営業している。

出来事の発端としての原因を表す

風邪から 肺炎をひきおこした。

ちょっとしたゆだんから 大変なことになった。

たばこの火から 火事を起すことが多い。

判断の根拠を表す

あの子の成績から すると、大学受験はとても無理だ。

この事実から 判断すると、あなたの見方は正しくないようだ。

うちの経済状態から いって、そんな高いものはとても買えません。

原料を表す

○日本酒は 米から 作る。

○水は 酸素と水素から できている。

○この教材は 上下二冊から なる。

④ト格補足語。ト格には、共同動作の仲間を表す用法と、対称的関係における相手を表す用法がある。

動作の仲間を表す

友達と お茶を飲む。

誰かと 一緒に出かけた。

弟と けんかをした。

対称的関係における相手を表す

○山田さんは 花子と 結婚した。

○これは 前のと 同じだ。

私と 同じ考えのかたはありませんか。

今までとは 逆な生活を始めた。

「ト」は必ずしも名詞に後続せず、ある内容を引用する場合に用いる用法がある。この場合の「ト」は厳密な意味では格助詞ではない。「引用の助詞」と呼ぶほうが正しい。

○ロボットは中国語で「机器人」といいます。

○鈴木さんはまだ学校にいると思う。

○私たちは今回の試みを失敗だとは考えていない。

○白書は、経済が回復期に入った、と指摘している。

○おりから日曜日とあって町は人出でいっぱいだった。

⑤デ格補足語。デ格は主として、出来事·動作の場所、道具·手段、材料、原因、範囲、限度、基準、動作の主体を表す。

出来事·動作の場所を表す

○私たちは毎日 学校で 英語の勉強をしています。

○結婚式は ホテルで 行われた。

プールで 泳ぐ。

道具·手段を表す

自転車で 行きます。

日本語で あいさつする。

電話か手紙で お知らせします。

材料を表す

○その子は 紙で 飛行機を作った。

○パイプは プラスチックで 作る。

○紹興酒は 米で 作る。

原因を表す

風邪で 学校を休む。

○私は 旅行で すっかり疲れた。

受験勉強で 忙しい。

原因を表す「デ」は理由を表すことができない。「風邪で学校を休もう」とは言えない。

範囲を表す

北京で は交通が非常に便利です。

日本で は中学校まで義務教育です。

ハルピンと桂林で はどちらがお好きですか。

限度を表す

100人で 募集を打ち切る。

明日の午前中で 終わるだろうと思う。

○この仕事は、 二、三日で できるでしょう。

基準を表す

5枚で 300円なら買います。

○これは 2千円で 買いました。

○新幹線は 時速270キロのスピードで 走っている。

動作の主体を表す

市政府で はとくに計画出産に力を入れています。

○後は 私たちで やります。

○後は 私の方で やります。

⑥ヘ格補足語。ヘ格は、方向·目的を表す。

北へ北へ と飛んでいく。

○この船は 港へ 向かっている。

母へ の手紙です。

⑦ヨリ格補足語。ヨリ格は、比較の相手、時の起点を表す。

比較の相手を表す

○中国は 日本より 広い。

○今年の夏は 昨年の夏より 暑かった。

○あなたは 私より だいぶ若いですね。

時の起点を表す

これより 表彰式を行います。

○学校は 8時より 始まる。

3.補足語は、一般に「名詞+格助詞」からなるが、名詞の代わりに名詞に相当する連語を用いてもよい。例えば、「 彼女が洗濯物を干しているのを 見た。」のアンダラインの部分は複文の節である。

なお、格助詞に副助詞をつけ加えたり、格助詞の代わりに副助詞を用いたりする場合もある。また格助詞に相当する連語(例えば、「によって」「をつうじて」など)を用いる場合もある。

(五)連用修飾語

1.文の中で述語(または他の用言、時には文全体)を修飾·限定する要素を連用修飾語という。

2.連用修飾語になるものは次の10種類である。

①副詞

○彼はその申し出を きっぱり 断わった。

○中国は日本より ずっと 広い。

○スピードを ぐんぐん 増す。

②形容詞の連用形(または形容詞+接尾辞)は、様態副詞と同様に、動きのありさまを表すことがある。

もうすこし速く 走りなさい。

(「もう少し」は「速い」を修飾し、「もう少し速く」は「走る」を修飾する。「もう少し」は副詞である)

○生徒たちは 真剣に 講義を聞いている。

○彼女は うれしそうに あいさつした。

形容詞の連用形は、次のような、知覚·判定を表す動詞を述語とする表現においては、対象の状態を表す。この場合、修飾語といっても省略することはできない。

○山の緑が 美しく 見える。

○私にはその話が 不思議に 思われた。

○私にはその話が思われた。(×)

形容詞の連用形はまた、変化後の状態を表すことがある。これには、主体の変化後の状態を表す場合と、対象の変化後の状態を表す場合がある。

述語が主体の変化を表す動詞である場合には、主体の変化後の状態が表される。

○西の空が 赤く 染まった。

○布が ボロボロに 破れた。

述語が対象の変化を表す動詞である場合には、対象の変化後の状態が表される。

○夕日が西の空を 赤く 染めた。

○花子は布を ボロボロに 破った。

③動詞のテ形

動詞のテ形は、「急いで」「喜んで」のように、動きのありさまを表すことがある。

○私はその仕事を 喜んで 引き受けた。

○太郎は 急いで 家へ帰った。

○青柳さんが 彼の新作を持って 訪ねてきた。

動詞のテ形は、また、知覚を表現する構文において、対象の状態を表すことができる。

○花子は実際よりも やせて 見える。

○遠くに何かが 光って 見える。

この場合、「やせて」と「光って」は、動きそのものではなく、「やせている」「光っている」という状態を表している。

④様態を表すデ格

「大声で」「~手つきで」「独力で」のようなデ格は、動きのありさまを表すことができる。

○先生は 慣れない手つきで シャツのボタンをぬいつけた。

○田中さんは 独力で 必要な資金を集めた。

⑤動詞の否定形+デ(または「ズ」)

○あの子は ご飯も食べないで 遊んでいる。

何も食わずに 寝ている。

何も言わずに すわっている。

⑥数量名詞、時の名詞

名詞の中に、「3本」「5頭」「7枚」「大勢」「全員」のような、数量を表わすものがある。数量を表す名詞の用法には主として、主語となるもの、述語の補足語の働きをするもの、名詞の修飾語の働きをするもの、名詞に後続して数量を明示する働きをするものがある。

全員 が賛成するとは考えられない。

(主語の働き)

○田島さんが飼っていた 5頭 の牛が次々に病気にかかった。

(名詞の修飾語の働き)

○80円切手 7枚 同封して、事務局に申し込むこと。

(名詞に後続して数量を明示する働き)

数量名詞は、数量を明示して述語の修飾語として用いることもできる。

○太郎は切手を 1000枚 集めた。

この場合、数量名詞は原則として、ガ格またはヲ格の名詞の数量を表現する。

○野次馬が 大勢 集まってきた。

(「大勢」はガ格「野次馬」の数量を表す)

○田島さんは新たに牛を 5頭 購入した。

(「5頭」はヲ格「牛」の数量を表す)

時の名詞は連用修飾語として用いることができる。

、誰かノックしたような気がする。

きのう も雨でした。

さっき 、誰が来ましたか。

⑦名詞+接尾辞

○マリヤは 約束どおり 、毎月パリの姉あてに送金した。

○男は 血だらけ で倒れていた。

⑧動詞+助動詞連用形

○列車は 飛ぶように 走っている。

○山の紅葉は 燃えるように 赤かった。

⑨「繰り返し繰り返し」「重ね重ね」「かわりがわり」のような動詞連用形の重複

重ね重ね お世話になった。

○お客は かわりがわり 来る。

⑩文の修飾語

主に話し手の主観的評価·気持ちを表すが、中には形容詞の連用形と文修飾副詞相当連語がある。

実は 私も始めてですが……。

珍しく 6月に雪が降った。

幸いなことに 一命をとりとめた。

正直に言って 、花子が手伝ってくれるとは思わなかった。

確かに 、その話は間違っていないようだ。

明らかに 、彼は嘘をついている。

文修飾副詞相当連語には、主に以下のようなものがある。

陳述の副詞に相当するもの

「間違いなく」「疑いもなく」「もしかすると」「ひょっとすると」など

評価の副詞に相当するもの

「嬉しいことに(は)」「有難いことに(は)」「幸いなことに(は)」「驚いたことに(は)」「運悪く」など

発言の副詞に相当するもの

「正直言って」「率直に言って」「実を言えば」「本当のところ」「要するに」など

(六)連体修飾語

1.連体修飾語は名詞を修飾·限定する。

2.次のことばが連体修飾語になる。

①連体詞

連体詞には、次の4種がある。

a.動詞の名詞修飾形式に由来するもの

「ある、あらゆる、いわゆる、かかる、あくる、来(きた)る、さる」など

b.動詞のタ形に由来するもの

「たいした、だいそれた、とんだ、困った、ふとした、おもだった、ちょっとした、堂々とした、確固とした」など

c.形容詞の名詞修飾形式に由来するもの

「おおきな、ちいさな、おかしな、こまかな、いろんな、ろくな、めったな、単なる、堂々たる、確固たる、微々たる」など

d.「名詞+の」という形式で表されるもの

「例の、一種の」など

これらの語は、名詞修飾のみに用いられ、述語として用いることはできない。

他に、「ほんの、たかだか、たった、およそ、約」のように、他の品詞とは関係ないもので、名詞修飾のみに用いられるものもある。

連体詞の由来と用法はほぼ対応している。動詞の名詞修飾形式に由来する連体詞と「名詞+の」という形の連体詞は、名詞を限定する役目を果たすものが多い。動詞のタ形に由来する連体詞と形容詞の名詞修飾形式に由来する連体詞は、修飾される対象の属性を表すものが多い。また、「ほんの」などは、数量の程度を規定する。

ある 日、 さる 日、 きたる 日曜日、 あくる 朝、 とある 村、 かかる 問題、 あらゆる 方面、 いわゆる 功績、 いかなる 困難

大した もの、 大それた 考え、 とんだ 話、 主だった メンバー

小さな 机、 大きな 虫、 おかしな 人、 いろんな 人間、 ろくな もの、 堂々たる 態度

例の 話、 一種の 抵抗感

せいぜい 500円だ。

②名詞+ノ

○これは 私の 辞書です。

○これはずっと 昔の 話だ。

兄の 時計はスイス製です。

③名詞+トイウ·名詞+トイッタ

○川上 という 人を知っていますか。

○『故郷』 という 小説をとっくに読みました。

○『人民日報』『光明日報』 といった 新聞

(「といった」は例示するニューアンスがある)

④名詞+助詞+ノ

先生からの 手紙

私への 遠慮は無用です。

(「私に遠慮する」の「ニ」は「ヘ」となる。「にの」の形はない)

形容詞についての 説明

りんごぐらいの 大きさ

そればかりの ことで泣くなんてみっともない。

⑤「名詞+ノ+助動詞」·「名詞+助動詞」

ニガウリのような 野菜もけっこう美味しい。

君のような 元気な青年なら、きっと成功するよ。

私みたいな 貧乏人には買うことができません。

○電車の中で、 田中さんらしい 人を見かけました。

⑥形容詞の基本形(またはタ形)·形容動詞の連体形

美しい 花、 美味しい 料理、 冷たい 水、 暑い 天気

○ゆうべ 激しかった 雨もけさ止んだ。

楽しかった 農村生活を思い出す。

静かな 時がほしい。

元気な のがなによりだ。

○あの きれいな 花はなんでしょう。

⑦動詞の基本形(またはタ形·テイル形)

飛ぶ 鳥あとを濁さず。

流れる 水はくさらない。

○新人賞を もらった 人は誰ですか。

ふとった 人は田中さんでしょうか。

○ピアノを 弾いている 人は純子です。

⑧「副詞」·「副詞+ノ」

すこし 前に出てください。

かなり 遠くからも見えた。

もっと 右!

なんらの 困難もない。

○これは はじめての 経験です。

しばらくの 間はつらかったが。

以上あげた(一)から(六)までの成分は文の主な成分といえるが、中でも(一)主題、(二)主語、(三)述語、(四)補足語の四つが骨組み成分で、(五)と(六)は付加成分というべきである。「骨組み」というのは、それさえあれば文が文として成り立つという意味であり、付加成分の付け加えによって表現がそれだけ詳しくはなるが、それがなくても文が成り立つわけである。

(七)独立成分

独立成分は一旦文脈から外れた成分である。独立成分には次のようなものがある。

1.挿入語

一つの文の中で、述語に従属せず独立して、述語ないしは従属的な成分を伴った述語に対して、説明を加える働きをする成分で、挿入句·挿入節ともいう。

○その山には、 行ってみたら分ることだが 、珍しい植物がたくさん生えている。

○その時から、 つまり第二次世界大戦以来 、世界は新しい状況を迎えた。

○この夏は、 雨の日が多かったせいだろうか 、例年より涼しく感じられた。

例えば、「その山には、 行ってみたら分ることだが 、珍しい植物がたくさん生えている」の文は、大きく二つの部分に分けることができる。すなわち、「その山には珍しい植物が生えている」と「行ってみたら分ることだが」の二つの文であり、後者は前者の文の途中にはさみこまれて、全体として一つの文を成している。この場合、前者を本来の文、後者を挿入語という。

2.提示語

文の成分の一つである。提示語の内容については様々な語が、強調のために文中から取り出され、文の初めに置き通された成分を指すのが最も一般的である。「 新潟県N市 、私は そこで 生まれた」の下線部がそれである。この成分が本来占めていた位置には、代名詞(ときに、連体詞+名詞)が補われるのが普通である。提示語の多くは体言、または、体言相当句の形で表される。

今年の9月1日 それは 本学の創立記念日である。(=今年の9月1日は本学の創立記念日である)

(主語を提示する)

寛容と忍耐 これが 私のモットーです。(=寛容と忍耐が私のモットーです)

(主語を提示する)

寝ながらテレビを見る これが 私の楽しみです。(=寝ながらテレビを見るのが私の楽しみです)

(主語を提示する。一見文の形のようだが、しかしこの場合は、構文的には「寝ながらテレビを見る」に匹敵する体言相当句と解釈されるべきである)

1949年10月1日 、中国人は この日 を忘れないでしょう。(1949年10月1日を中国人は忘れないでしょう)

(連用修飾語を提示する)

独立 、彼らの求めたのは これだ 。(=彼らが求めたのは独立だ)

(述語を提示する)

3.呼びかけ語

話者が相手の注意を自分に向けさせるために発する語である。呼びかけ語には、相手の名前、あるいはそれに類する語、あいさつ語、感動詞などがある。

皆さん 、こんにちは。

純子 、ちょっとおいで。

先生 、うちの息子、K大通るでしょうか。

4.感動詞

感嘆詞、間投詞などの呼称もある。独立語として文の初めに置かれるか、独立した一語文として使用される。驚き、疑問、当惑、詠嘆、喚起などの感情か、注意、制止、勧誘、呼びかけ、応答などの意志を直接的に表現した語である。感動詞には、以下のようなものがある。

表情音に由来するもの

「おお、ああ、おや、まあ、ええ」など

他品詞から転成したもの

「これ、それ、どれ、ちょっと、もし、よし、しまった」など

畳語形式のもの

「もしもし、どれどれ、これこれ」など

複合形式のもの

「おやまあ、いやはや、あれまあ、はいよ」など

派生形式のもの

「あい、へい、おっと、いやっ、どうれ、はあて、ありゃ、うんにゃ、じゃ」など

ああ 、春が来た。

はい 、分りました。

おお 、寒い。

そう 、その通りだ。

5.接続詞

用法上は、二つ以上の語か、文節、文の連鎖したものなど同士の間に立って両者を結びつけ、意味上は、先行の表現内容と後続の表現内容との関係を示し、機能上は、先行表現を受けて後続表現を展開させ、文法上は活用がなく、他の品詞とは修飾·被修飾的関係を持たない独立語である。

接続詞は一般に意味上から、次のように分類されている。

並列 「そして、および、かつ、ならびに、それから」など

累加 「また、それに、そのうえ、しかも」など

選択 「あるいは、または、もしくは、それとも」など

順接 「したがって、そして、すると、それで、だから、ゆえに」など

逆接 「が、けれど、しかし、でも、ところが」など

説明 「すなわち、つまり、例えば、要するに」など

補足 「ただし、だって、なぜなら」など

転換 「さて、では、ときに、なお、もっとも」など

けれども 、私はすこしも知らなかった。

○きのうは風が強かった。 それで こんなに花が散った。

○行くか それとも 帰るか、早く決めなさい。

○山 また 山を越える。

○兄は特待生だった。 そして 弟も劣らず秀才だ。

○勤の帰りにデパートに寄り、 そして これを見つけたのです。

練習問題

1.主題とはなにか。

2.例で「主題は既知の情報でなければならない」を説明しなさい。

3.文のどんな成分が主題に成り得るか。

4.次の文は有題文であるか、無題文であるかを判断しなさい。

①雪が降っている。

②Aさんはユーモア的だ。

③飛行機が飛んできた。

④山は青い。

5.現象文について述べなさい。

6.主題を示すには、「は」があるが、「は」の外に、また何があるか。

7.例で「って」と「とは」の使いわけを説明しなさい。

8.主語の定義をいいなさい。

9.「が」の外の助詞で主語を示す例を三つ挙げなさい。

10.「が」が対象語を示す例を三つ挙げなさい。

11.例で述語の機能をいいなさい。

12.動態述語と状態述語について簡単に説明しなさい。

13.以下の文を正しいかどうかを判断しなさい。

①母は腰が痛い。

②妹も自転車がほしい。

③あなたはとても淋しい。

④父は頭が痛かった。

⑤弟はあの人が憎いそうだ。

14.補足語にはなに格があるか。

15.連用修飾語とはなにか。

16.次の二つの文の下線部の連用修飾語の違いを説明しなさい。

①田村さんは 急いで 帰国した。

②小田君は 大声で 叫んでいる。

17.文修飾副詞相当句を八つ書きなさい。

18.「せいぜい」「およそ」「約」は名詞を修飾することができるか、できるとすれば、例を挙げなさい。

19.以下の文の下線部は挿入語と提示語のどちらであるか。

①私のもとには、息子―― いわば私の唯一の財産 ――しか残らなかった。

②例えば、 例えばですよ 、あなたはもしものことがあったとしたら、あなたの子供さんたちはどうなるでしょう。

リンゴとみかん 、二つの果物はどちらが好きですか。

生活費が上がる 、それが問題だ。

20.並列·累加·選択·順接·逆接·説明·補足·転換を表す接続詞をそれぞれ二つ書きなさい。 abqAV/48JLZeG5C6QpUl33UtC8TvDc9WA+KrSqEQuC1kwAzdl/i1WK1Ib3l2IHQw

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