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5.本研究の構成

本研究は、前節の4.1で述べた課題を本研究の考察対象とするが、その考察は五つの章を立てて論述していく。以下、その構成の内容について、簡単に述べておく。

第1章では主に授受動詞構文の本質的意味特徴について考察する。その主なポイントは、まず「(テ)クレル·(テ)ヤル·(テ)モラウ」という汎言語的に見れば特殊な3系列体系上の特徴を、先行研究の然るべき成果を援用しながら分析する。その結果、表面では特殊な三項対立の視点を表しているように見える日本語の授受動詞構文は授受事象の本質から見れば、多くの言語と同じように、汎言語的な「モノの移動」、即ち「イク」か「クル」かという二項対立の視点を表していることを主張する。本研究では、授受動詞構文が表す「モノの移動」を<対象使役移動>と称する。

一方、3系列構文の並列共存を決める主たる要因の<話し手関与性>についても、<対象使役移動>に還元して見れば、移動の方向性を表す<話し手指向性>と<話し手離反性>という二つの方向性に分けて捉えることのできることを提示する。

また、前節4で述べたように、構文全体の意味を的確に捉えるためには、述語動詞の構文的機能だけでなく、構文全体の完結性と構文の各構成要素も視野に入れて総合的、且つ厳密に捉える必要がある。従って、<対象使役移動>や<話し手指向性>·<話し手離反性>を関連要素として導入する以外に、授受動詞構文が表す<恩恵性>についても注目しなければならない。この章では本動詞構文が表す「モノ的授受」の中の「モノ」の意味特徴について調査してみる。それによって、「モノ」の意味特徴は本動詞構文全体の意味を表す上では無視できない重要な意味を持つことを明らかにする。そして「恩恵性の萌芽」として本動詞構文に内包される「モノ」の意味特徴は補助動詞構文への意味的拡張にも大きな影響を与えるものであることを論述する。

第2章では、第1章で取り上げた<対象使役移動>、<話し手指向性>·<話し手離反性>、<恩恵性>を主な要素として取り入れ、日本語授受動詞構文の構文と意味の関係について考察する。その主な手法は、まず授受事象の本質である<対象使役移動>を出発点、前提として、授受動詞構文が表す意味を「モノ的授受」と「非モノ的授受」に分ける。そして、構文に現れる前接動詞の語彙的意味特徴を手がかりとして、動詞の構文機能から、授受動詞構文の構文的特徴を考察する。このような手法によって、従来看過されてきた本動詞構文と補助動詞構文の間の意味的関連性·連続性と補助動詞構文内部の意味的関連性·連続性を抽出していく。さらに、このような意味上の関連性·連続性は本質的には構文上に見られる同様な関連性·連続性に起因していることを論述し、構文上の関連性·連続性は根本的に前接動詞の語彙的意味特徴によって決定づけられるものであることを指摘する。

第3章では、第1章と第2章の論述内容を踏まえて、「モノ的授受」と「非モノ的授受」のそれぞれに現れうる動詞の語彙的意味制約から、構文の意味と動詞の意味の相関関係について考察し、分析する。

「モノ的授受」を表す動詞と「非モノ的授受」を表す動詞にはそれぞれ語彙的意味制約を受けており、同時に、類縁性を有し、連続性を表している。本章ではこれについて、工藤(1995)、三宅(1996a)、影山(1996)を参考にしながら、「モノ的授受」と「非モノ的授受」の事象を分析し、その言語的な事象構造を構築していく。

第4章では、授受事象の本質を前提として、従来取り上げられてきている受益者格表示のニ格の問題と、テモラウ構文における動作主格表示のカラ格の問題を考察する。

本研究は従来の研究とは異なり、授受動詞構文が表す「モノの移動」という本質的な意味を前提に据えて、テクレル·テヤル構文におけるニ格顕現の問題であれ、テモラウ構文における動作主格のカラ格とニ格の使用の問題であれ、それらが、「モノ的授受」と「非モノ的授受」の性質と密接な関わりを持っていることを論述する。

また、従来ニ格が言語事実として受益者格表示の役割を果たしているがために、専ら受益者格表示の格標識と認識されてしまっている傾向が見られるが、ニ格と受益者格標識とは本質的に異なり、逆に峻別して捉えなければならないものであることを論述する。

同様に、ノタメニ格についても同様な捉え方が一般的に存在しているが、ノタメニ格も、受益者を表示することはあるが、それが受益者を表示する格標識と捉えることはむしろ危険あることを論述する。さらにその上に、「(テ)クレル·(テ)ヤル·(テ)モラウ」の受(授)益者を標示する機能を提起する。

第5章では、授受動詞構文が表す「モノの移動」の本質的意味特徴から改めて恩恵性について考察する。3系列構文が表す恩恵性という意味特徴は、まず授受動詞構文が表す多義性の一面として捉え、そうした多義性はいずれも、各系列構文の構文的特徴と密接不可分な関係にあることを根拠を示しながら論述する。

また、3系列構文に現れる多義性や特殊な意味用法、例えばテクレル構文の「評価性」、テヤル構文の「意志性」、そしてテモラウ構文の「潜在的使役性」は、各系列構文の構文的特徴と密接な関係を持っていることも言語的事実を提示しながら論じる。

さらに、本章においては、テモラウ構文について、構文的特徴に立脚して、益岡(1981、2001)の「使役型テモラウ構文·受身型テモラウ構文」、許(2000)の「依頼型テモラウ文·非依頼型テモラウ文」とは異なり、「直接使役型テモラウ構文」と「間接使役型テモラウ構文」とを提起して分析する。この提起はテモラウ構文の構文上·意味上の特徴を視野に入れ、構文と意味の両方から構文としての完結性を重視し、テモラウ構文を総合的、体系的に捉えることをそのねらいとしており、このねらいは本研究の一貫した立場でもある。 AxjgqdXuVildR/NxuLZaS/dBjOsP3i+GUdeRaI0t3HOaNXHuOgmUhHqPPBdxStcb

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